あなたの年金給付額はどうなる? 「サラリーマンが損をする」は本当? 年金制度改革で知らないと損をするポイント

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「ほぼすべての人に関係がある話」

「106万円の壁」撤廃、基礎年金の引き上げ、在職老齢年金制度の見直し。最近、年金を巡るニュースが散発的に報じられているが、それらを体系的に理解できている人はあまりいないのではないか。複雑極まる年金制度改革についてどこよりも分かりやすく解説する。【前後編の前編】

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 間もなく終わろうとしている2024年が「年金制度」にとって重要な年だったことをご存じだろうか。

「今年は5年に1度のサイクルで行われる年金の『財政検証』の年でした。夏に検証結果が公表され、この年末までに年金制度改革の具体的な案がまとめられます。その上で厚生労働省は来年1月の通常国会に関連法案を提出する方針です」(厚労省担当記者)

「106万円の壁」撤廃などの報道が相次いでいるのは、議論が大詰めを迎えているからである。しかし、それらの改革が現実のものとなった時、「自分の年金」がどうなりそうかを正確に把握できている方はどれくらいいるだろう。

「今回の改革の目玉は、基礎年金(国民年金)の給付水準を底上げする、という案です。日本の公的年金制度は基礎年金と厚生年金の“2階建て”になっており、1階部分の基礎年金は、日本国内に住む20歳以上60歳未満の人全員に加入義務がある。その給付水準の底上げが検討されているわけですから、ほぼ全ての人に関係がある話といっていいでしょう」(同)

「給付を減らす対策しかない」

 給付水準の底上げ、というとわれわれにとって“良い話”のように聞こえるがそう単純ではない。

 社会保険労務士の北村庄吾氏が言う。

「少子化で現役世代が減っている中で年金制度を維持するためには、保険料を上げるか給付を減らすかの2択しかありません。厚生年金の保険料率は04年の改正で18.3%まで引き上げられることが決まり、それ以上は引き上げないことになっています。残るは給付を減らす対策しかなく、そのために現在、マクロ経済スライドという仕組みを使って給付を抑制しているのです」

 マクロ経済スライド。

 耳にしただけで拒否反応を示す人が多そうな難解な用語だが、これを理解しなければ年金の“現状”を把握することはできない。

「マクロ経済スライドというのは、物価や賃金の上昇率から平均0.9%を差し引いた率が年金の上昇率になる仕組みです。物価や賃金の上昇と連動して年金の給付水準も上がっていけば、年金の財源はすぐに枯渇してしまいます。そこでマクロ経済スライドによって、物価や賃金の上昇率に比べて年金の上昇率を低く抑制しているのです」(同)

マクロ経済スライドの“目標”

 マクロ経済スライドが続くうちは年金の支給額が低く抑えられるが、その措置はいつまでも続くわけではない。そこには“目標”が定められている。

「マクロ経済スライドの一つの到達点は、年金の所得代替率を現在の61.7%(19年)から50%にまで低下させることです。所得代替率とは、年金の額が現役世代の手取り収入(ボーナス込み)の何%か、という数字です。年金制度は『100年安心』をうたっていますが、所得代替率が50%まで下がれば、今後100年にわたって、額はどうあれ、年金を給付し続けることができるだろう……ということなのです」(北村氏)

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