デビュー40周年目前のTUBE、“冬うた”やバラード曲の意外な人気に本人たちも興味津々 Spotify再生回数ランキングを深掘り

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「潮風の中で」「君がいるから」も大健闘。意外なランキングに、春畑と角野も興味津々

 Spotify第27位にランクインした「Purity~ピュアティ~」は、‘98年のアルバム『Bravo!』の1か月後にリカットされたシングルだ。すでにアルバムに収録された楽曲のため、オリコン最高33位と、それまで14作続いていたTOP10入りが途切れることになったが、現在のSpotifyでの再生回数は、その前後に発売されたシングル「情熱」や「-純情-」よりも圧倒的に多い。つまり、これもリリース以降、意外な人気曲として成長したのだろう。

春畑「この曲は、ソニーのスタッフさんから、“アルバムの中だけに収めるにはもったいないから、リカットしませんか?”と提案があったんです。曲先(作詞より先に作曲を行うこと)で書いたんですけど、レゲエ調にしたくなるような不思議なメロディーが思い浮かびました」

 続く第28位の「灯台」は、オールタイムベストのリリース後としては2番目の人気シングル曲で、「人 夢 愛 波 風 雨」と人生をしみじみと振り返ったようなバラードだ。そのカップリング曲も、幸せな聖夜を祝うようなクリスマスソングの「Love In White」(第44位)、そして角野が作詞、作曲、メインボーカルをつとめたフォーク調のミディアム曲「Back To Good Days」と、それまでのTUBEらしさとはひと味違った作風だが、心にじーんとくる楽曲が揃っているためか、すべてTOP80内に入っている。

春畑「’15年のシングルは、みんなで話し合った結果、“落ち着いたアレンジをなさる方にまるごとプロデュースしてほしい”と鳥山雄司さんにお願いしたんです。鳥山さんからは、ドラムで“ダーン!”とか、ギターで“ジャーン!”とか演奏しないようにね、と言われました。『Love In White』は、前ちゃんが絶対にライブでやろうとしないんですが(笑)、ここでは意外と再生されていますね」

角野「TUBEには珍しい冬の作品だし、何より自分たちの長年のやり方とは違っていたので、かなり新鮮で勉強になりました」

 他にも、二人は’20年の最新アルバム『日本の夏からこんにちは』が聴かれていることに反応を示した。また、落ち着いたテイストの「潮風の中で」(31位)や、ストレートなラブソングの「君がいるから」(35位)の健闘ぶりにも驚いていた。

春畑「この2曲はちょっと意外! 僕らの予想では、テレビで歌った夏祭り風の『日本の夏からこんにちは』(Spotify61位)のほうが人気だと思っていたのに。『湘南盆踊り』も73位だから、こういうお祭りのような曲は聴かれ方が限られるのかな?」

角野「確かに、曲としては『日本の夏からこんにちは』のほうが盛り上がるんだけど、ストリーミングで何度も聴きたいとなると、『潮風の中で』とかになるんでしょうか。でも、57位の『涙を虹に』はライブで盛り上がるので、もっと上位かと思っていました」

「涙を虹に」はオールタイムベストの『Excite盤』に収録されていることもやや苦戦している一因だろう。というのも、ストリーミングでは『Tropical盤』→『Unique盤』→『Ballad盤』→『Excite盤』という順番でリストになっているので、『Excite盤』の収録曲は全体的に低めの順位になっているのだ。しかし、その中でダントツ人気なのが第23位の「傷だらけのhero」。‘94年のアルバム『終わらない夏に』の収録曲で、『熱闘甲子園』(ABC・テレビ朝日系)のテーマ曲となった、熱いロックンロール・ナンバーだ。

春畑「これは、友人の野球選手やゴルファーなどが好きだと言ってくれて、アスリートに人気だと思います」

40周年は「ライブをますます頑張ります!」デビュー記念日にはハワイでコンサートも

 ここからはTUBEの’24年を振り返りつつ、’25年の予定を見ていこう。まず’24年は、2月にTUBE×GACKT名義で「サヨナラのかわりに」(Spotify第30位)、8月にTUBE×DA PUMP名義で「真夏のじゅもん」(Spotify第85位)と、2作のコラボレーション曲をリリースした。前者は別れをドラマティックに描いたバラードで、後者は“プンパダンブチュー”というフレーズが愉快なアッパーチューンだ。

春畑「『サヨナラのかわりに』は、まず僕らでベーシックに作ったものを、GACKTさんが“Bメロはこういう風に”、“間奏をもっと長く”とか、かなり具体的に意見してくれて、何度も一緒に練り直しました」

角野「『真夏のじゅもん』は、Spotifyでは圏外ですが、夏の野外ライブではすっごく盛り上がりましたよ。やっぱり、家でストリーミングを聴くのと、みんなでワーって騒ぐのとは違うんですね。’94年のシングル『恋してムーチョ』(Spotify第24位)も、前作の『夏を抱きしめて』ほどヒットしていなかったけれど、今ではライブですっかり定番化しましたから。これも、きっと一人でくつろいで聴くのとは違いますからね(笑)。来年もコラボはまだ続く予定で、デビュー記念日の6月1日には、ハワイでコンサートすることが決まっています。40周年は、ライブをますます頑張りますよ!」

春畑「ライブの前に、11月に出した映像ソフト(『TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2024 SUN CUE 4 OAR ~2 Stadiums~』)もチェックしてもらえたら。これは、GACKTさん、北山たけしさん、DA PUMPのみなさんのあとに北山たけしが出てくれたライブをほぼノーカットで収録し、その舞台裏のミーティングやステージづくりも撮影しています。ステージでずぶ濡れになった前田が、どうやって次のステージで復活しているか、とかも見どころです(笑)」

 ちなみに、30周年だった’15年は、春夏秋冬に合計4枚のシングル、2枚組のオリジナルアルバムに、4枚組のオールタイムベスト、と怒涛のリリースがあったので、40周年もさまざまな記念作品があるのではと、多くのファンが期待してしまうであろう。

 最後に、ストリーミングのリスナーへのコメントをお願いすると、

春畑「このランキングを見ると、自分たちが全く予想していなかった曲がたくさん聴かれていて嬉しいですね。新しい曲も含め、ご自身の興味があるところから、どんどん引っ張って聴いてください」

角野「いつものTUBEの定番曲以外も人気なのが面白いです。みなさんが各々で作ってくださったプレイリストも、ちょっと見てみたいかも。これを機に、シングル以外の楽曲もよろしくお願いします」

 TUBEの楽曲一覧を振り返ってみると、恋心も純情も、笑いも涙も揃っているのがとても人間くさく、また、聴いていると熱い想いが伝わってくることを改めて実感した。昭和から平成、令和にかけて、TUBEがずっとTUBEらしく活動を続けていることで、時代が変われども大切なものはずっと同じなのだと、私たちリスナーに教えてくれている気がする。

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 全3回でお届けしたTUBE春畑道哉、角野秀行インタビュー。【インタビュー第1回】では「あー夏休み」と「シーズン・イン・ザ・サン」を中心に、【インタビュー第2回】では、真冬にレコーディングする“夏うた”事情について語ってもらった。

【INFORMATION】
◎最新映像商品『TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2024 SUN CUE 4 OAR ~2 Stadiums~』発売中!
 TUBEが今年7、8月に開催した阪神甲子園球場、横浜スタジアムのスタジアムライブ2公演と、ライブまでの準備やリハーサルなど当日まで舞台裏を収めたリッチな1作で、ファンならずとも必見の内容となっている。
〈収録内容〉
[Disc1] (140分)
2024年8月24日 に横浜スタジアムで行われた「TUBE LIVE AROUND SPECIAL 2024 SUN CUE 4 OAR」を全曲収録
[Disc2] (72分)
スタジアム公演までの準備やリハーサルなどの密着映像と、2024年7月13日に阪神甲子園球場でのライブを収録
詳しくはオフィシャルサイトにて
https://www.sonymusic.co.jp/artist/Tube/

【TUBE プロフィール】
ボーカルの前田亘輝(1965年生まれ、厚木市出身)、ギターの春畑道哉(’66年生まれ、町田市出身)、ベースの角野秀行(’65年生まれ、座間市出身)、ドラムスの松本玲二(’66年生まれ、座間市出身)からなる4人組バンド。デビュー前に“パイプライン”を結成し、’85年6月1日にシングル「ベストセラー・サマー」にて“The TUBE”としてデビュー。’86年、3rdシングル「シーズン・イン・ザ・サン」がキリン生ビールのCMソングに起用され、初のオリコンTOP10入り。以降、数多くのシングルおよびアルバムをヒットさせる。’89年からは、ほぼ全曲をセルフ・プロデュースに。また、ライブも好評で、’88年にスタートした横浜スタジアムでの野外ライブは、毎夏の恒例行事となっている。’24年はGACKT、DA PUMPなど、他アーティストとのコラボも精力的に行っている。

臼井孝(うすい・たかし)
人と音楽をつなげたい音楽マーケッター。1968年、京都市生まれ。京都大学大学院理学研究科卒業。総合化学会社、音楽系の広告代理店を経て、'05年に『T2U音楽研究所』を設立し独立。以来、音楽市場やヒットチャートの分析執筆や、プレイリスト「おとラボ」など配信サイトでの選曲、CDの企画や解説を手がける。著書に『記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝』(いそっぷ社)、ラジオ番組『渋谷いきいき倶楽部』(渋谷のラジオ)に出演中。データに愛と情熱を注いで音楽を届けるのがライフワーク。

デイリー新潮編集部

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