TUBEの定番“夏うた”「あー夏休み」、メンバーは「当初、シングル化を嫌がっていた」音楽界での立ち位置に悩んだ過去も明かす
記録と記憶で読み解く 未来へつなぐ平成・昭和ポップス TUBE(全3回の第1回)
この連載では、昭和から平成にかけて、たくさんの名曲を生み出してきたアーティストにインタビューを敢行。令和の今、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービス(サブスク)で注目されている人気曲をランキング化し、各曲にまつわるエピソードを深掘りすることで、より幅広いリスナーにアーティストの魅力を伝えていく。
【画像】おなじみの“夏うた”だけじゃない!“冬うた”も…「TUBE Spotify再生回数ランキング」 ほか
今回は、2025年にデビュー40周年となるTUBEにフィーチャー。ギターの春畑道哉とベースの角野秀行へのインタビューを全3回にわけてお届けする。第1回では、今や全世代において“夏うた”の定番となっている「あー夏休み」と「シーズン・イン・ザ・サン」を中心に語ってもらった。
まずはじめに、TUBEのSpotify月間リスナー数を見ると、季節によって変動がある。夏はゆうに50万人を超えるが、この秋冬でも約35万人と、ベテラン・アーティストの中ではかなり多い数字だ。春畑と角野にストリーミングの利用状況を尋ねてみると、
角野秀行(以下「角野」)「僕は、CDショップに足を運び、そこで好きになった作品を買うタイプで、ストリーミングは、“あの曲なんだっけ?”って確認したい時に検索しています。でも、そこで新しく気になる楽曲を見つけたら、またCDを買っちゃう(笑)」
春畑道哉(以下「春畑」)「僕自身は、かなりストリーミングを使っているほうですが、TUBEの楽曲は解禁がなかなか進んでいなくて、今もシングルのカップリング曲が一部未配信なんですよね(苦笑)。でも、アマチュア時代にコピーしていた洋楽の懐メロなどがすぐに聴けるのは便利ですよね」
それでは、ここからSpotifyの人気曲ランキングを見ていこう。
圧倒的1位の「あー夏休み」は「当時、シングルにするのを嫌がっていたくらいでした」
Spotify第1位は、’90年のシングル「あー夏休み」。再生回数は1千万回を超え、TUBEの中でも桁違いだ。しかし、リリース当時は週間最高10位、累計売上約24万枚(いずれもオリコン調べ、以下売り上げについては同じ)で、TUBEのシングルでは上から数えて17番目と、そこまで上位ではない。だが現在は、ストリーミングだけでなく、カラオケ歌唱回数(JOYSOUND調べ)でも、この曲がダントツの1位に。さらに、’10年代の半ば以降、好きな夏うたを尋ねるアンケートが実施されるたびに、ゆず「夏色」(’98年)、ジッタリン・ジン/Whiteberry「夏祭り」(’90年/’00年)、そしてTUBEの「あー夏休み」のうち少なくとも2曲がTOP3内に入るほどド定番の曲となっている。
ただ、この「あー夏休み」、TUBEが‘15年にリリースした全4種のオールタイムベスト『Best of TUBEst ~All Time Best~』では、王道の夏うたが多く収録された『Tropical盤』ではなく、『Unique盤』に収録されている(他の2枚は『Ballad盤』と『Excite盤』)。 まずは、この曲を“Unique”に区分した理由を二人に尋ねてみた。
角野「僕らとしては、着物を着てパフォーマンスするなど、当時から王道じゃないつもりで出した歌なんです」
春畑「当初、角野は、この歌をシングルにするのを嫌がっていたくらいでした(笑)。実は、シングル候補としては、サビ頭で爽快な曲調の『N・A・T・S・U』(Spotify28位)をメンバー全員で推していたんですよ。でも当時のプロデューサーからはOKが出なくて、“もっとこういう曲を作れば?”とギターでアドバイスされながら作ったのが、和風で懐かしい感じの『あー夏休み』なんです。さらに、サビの部分で同じようなメロディーが延々と続くので、ラストにボーカル前田(亘輝)の最高キーを持ってきて、“あーーー”の高音部分でインパクトをつけました」
角野「タイトル候補は『Oh! Summer Horiday』だったのが『あー夏休み』になり、歌詞にも何回もダメ出しがあって、どんどん和テイストになっていきました。『シーズン・イン・ザ・サン』など、初期のころに織田哲郎さんが書いてくださった曲は、16ビートで海外の海のイメージがあるのですが、『あー夏休み』あたりから、サウンドでも日本、湘南という感じが強くなりましたね。当時は照れ隠しもあって、ミュージックビデオもふざけた感じで作ったのに、今じゃ野外ライブで外せない楽曲になりました。当時の僕らは見る目がなかった(苦笑)」
ちなみに、’07年に『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)が実施した『夏うたランキング』では、「シーズン・イン・ザ・サン」の16位に対し「あー夏休み」は44位という結果に。しかし、’15年の同ランキングでは「あー夏休み」が2位、「シーズン・イン・ザ・サン」が6位と逆転し、以降も「あー夏休み」>「シーズン・イン・ザ・サン」という傾向が続いている。このことから、より若い世代に、ノリの良い「あー夏休み」が支持されていったということが考えられる。
角野「『あー夏休み』を演奏する時、特別な演出はしていないのだけれど、みんなで軽く振りを入れて、大人もお子さんも一緒に声を出して歌える、というのがいいのかもしれないですね」
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