「踊る大捜査線」はエヴァを意識して作られた!? 亀山Pが明かす知られざるシリーズ制作裏話とファンに「ずっと謝りたかったこと」

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約20年振りに現場で指揮を執った

「一生懸命何かをやろうと思っても、時代遅れだと言われて、はじき飛ばされてできないことだってあります。数年前、ご存じのようにフジテレビは早期退職者を募りました。かつての仲間が、何人も僕のところにあいさつに来て、『辞めることにしました』と話すわけです。話を聞くと、『ドラマを作りたくて入ってきた』『バラエティを作りたくて入ってきた』という。しかし、年齢やキャリアが上がっていく中で管理職となり、どんどん現場から外れていく。『どうなるか分かりませんが、一度外に出て、小さいものでもいいから作りたい。表現の場所はたくさんありますから』、そう言って出ていった同僚たちを見てきた」

 彼ら彼女らの姿を見て、「自分はどうなんだろう」と考えたという。

「僕自身、ドラマを作りたくてフジテレビに入社した。おかげさまでヒット作を生み出すことができ、フジテレビの映画ブランドをなんとなく作れたのかなという満足感もあった。だから、そろそろ卒業かな、なんて考えていた。ですが、決意を持って辞めていく人間を目にして触発されたんです。できることがあるなら、やらなければいけないと」

 自分たちが線を引いただけで、「踊るシリーズ」は完結していない。青島も室井も生きている。彼らは今、何をしているんだろう。本当に区切りを付けるために、同作は再び動き出した。

「室井慎次 敗れざる者」「室井慎次 生き続ける者」の両作で、亀山は「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」以来、約20年振りにプロデューサーとして現場で指揮を執った。

「本当は若いプロデューサーに任せたかったんですよ。ただ、本広監督は『この内容は僕に向いてない』なんて話すし、脚本の君塚良一さんの思いも共有している。柳葉さんにも現場で伝えていくことがあるから、さまざまな調整をするためにやらざるを得なかった(笑)。プロデューサーって調整するためにいますから。とは言え、現場のプロデューサーとしてド真ん中で仕事をするなんて本当に久しぶりだった」

「長い旅がまた始まるんだろうなと感じています。ですが…」

「久々の現場はどうでしたか?」、そう問うと、「面白かったですよ」と照れ臭そうに答える。

 現在、亀山はBSフジの代表取締役社長である。社長が現場でモノ作りの最前線に立つ。そうした前例ができたのなら、管理職になった歴戦のテレビマンが、ときに現場でコンテンツを作れる可能性につながらないだろうか――。だが、水を向けられた亀山は、「あまり良い例だとは思わないんです」と冷静だ。

「僕自身初めてのことなので、これが組織として良いことなのか分かりません。良い例にならない方がいいのではないかとも思う。現在、BSフジは業績も上向きで、社員たちには積極的にモノ作りに関わってほしいと伝えています。番組の収録があるなら、スタジオへどんどん見学しにいきなさいと。そういう状況下で、第一線をとうに引退した人間が再び現場で指揮を執るというのはどうなんだろうって。ましてや、『踊る大捜査線』はフジテレビの知的財産。僕はBSフジの人間です。そのため今回はBSフジの社業としてかかわったのですが、自分の経験則は理屈にすぎません。その理屈を振りかざしていいのだろうかと思うんですね」

 アナウンスされた「踊る大捜査線 N.E.W.」は、青島のティザービジュアルが公開されたのみで、亀山自身、「どうなるかは分からない」という。

「長い旅がまた始まるんだろうなと感じています。ですが、その船に僕は乗らないかもしれない。船出を見送る側になるのではないかと」

 自らに言い聞かせるように、稀代のヒットメーカーは頷いた。

我妻 弘崇(あづま ひろたか)
フリーライター。1980年生まれ。日本大学文理学部国文学科在学中に、東京NSC5期生として芸人活動を開始。約2年間の芸人活動ののち大学を中退し、いくつかの編集プロダクションを経てフリーライターに。現在は、雑誌・WEB媒体等で幅広い執筆活動を展開。著書に『お金のミライは僕たちが決める』『週末バックパッカー ビジネス力を鍛える弾丸海外旅行のすすめ』(ともに星海社)など。

デイリー新潮編集部

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