「37年前『写真パクリ騒動』を起こした画家に私を裁く資格はあるのか」日本画の最高峰画壇「院展」から“盗作疑惑”をかけられた元理事の怒り
日本画の展覧会として知られる「院展」を主催する公益財団法人「日本美術院」から昨年“盗作疑惑”をかけられ処分を受けた画家・梅原幸雄氏の告発の続き。梅原氏の疑惑を審議した倫理委員会には「信じたがいメンバー」が加わっていたーー。(前後編の後編)
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【写真】梅原氏の作品と盗作疑惑をかけられる元となった作品の「全容写真」。37年前、日本画壇を騒然とさせた「写真パクリ騒動」の「比較写真」も
「天地神明に誓って盗作はしていない」
インタビューに答えるのは「日本美術院」に所属する会員の中で最高ランクの「同人」に名を連ねる日本画家の梅原幸雄氏(74)。梅原氏は、昨年の「春の院展」に出品した作品が同じく同人である國司華子氏が22年前に出品していた作品と「似ている」という理由で倫理委員会にかけられ、理事解任と同院が主催する展覧会への1年間の出品停止処分を受けた。
梅原氏は処分の無効などを求めて昨年6月、同院を提訴。現在も係争中である。
確かに2つの絵を見比べると、対象となった女性の髪型やポーズなどの構図がよく似ている。だが、梅原氏は「自分は天地神明に誓って盗作はしていない。言い分が聞き入れられずに一方的に理事たちに処分を下された」と訴える。(ここまでの経緯は前編【日本画の最高峰「院展」元理事が告発「理事会に“盗作作家”の濡れ衣を着せられた」「偶然構図が似ただけなのに」】を参照)
梅原氏は倫理委員会でもう一つ納得行かなかったことがあると話す。
「過去に盗作騒動を起こした理事が参加していたのです」(梅原氏、以下同)
10年にわたり数十点、外国人の写真を無断盗用していた「過去」
その人物こそが下田義寬理事だ。下田氏は1978年に同人入りした日本画家で倉敷芸術科学大学名誉教授でもある。同院のホームページには、大観賞、文部科学大臣賞、内閣総理大臣賞受賞など同氏の輝かしい経歴が羅列されてあるが、“ある経歴”がすっぽり抜け落ちている。東京藝術大学で助教授まで務めた学歴だ。
実は下田氏には、37年前「パクリ騒動」を起こして藝大を追われた過去があるのだ。1987年、下田氏が少なくとも10年にわたり数十点、自分の作品に外国の動物写真集や画集の図柄を無断盗用していた疑惑が持ち上がった。その中には下田氏の代表作として知られ、54年の院展で文部大臣賞を受けた「風舞う」も含まれていた。
「風舞う」と元になった写真を見比べれば、参考にした程度ではなく「模写」に近かったことは一目瞭然である。指摘を受け、下田氏は盗用を認め藝大助教授を辞職。当時、下田氏は「中央公論」の表紙を手がけるなど現代日本画のホープと目されていた。新聞テレビが大きく取り上げたことで画壇は上を下への大騒ぎになったのである。
その後下田氏は数年間鳴りを潜めていたがいつの間にか画壇に復帰したという。そして何事もなかったかのように、下田氏は日本美術院の理事にまで上り詰めていた。
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