西武の契約更改はなぜ揉める? 配置転換にメジャー志願、背番号も…直訴続々
平良が保留 2年前にも「納得できない」「大爆発です」
ひと昔前のプロ野球の契約更改交渉は、保留や越年が日常茶飯事。交渉後の記者会見では、選手が球団批判をぶち上げることもしょっちゅうで、シーズンオフの風物詩となっていた。近年は保留そのものが激減。事前に入念な“下交渉”が行われ、概ね合意した上で正式な交渉の場に就くようになったからとみられる。ところが、例外的に何かと紛糾し話題を提供しているのが埼玉西武ライオンズの契約更改交渉。特に投手陣の場合だ。
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今年も平良海馬投手が、12月3日に行われた1回目の交渉で契約を保留。球団サイドの来季リリーフ起用構想を、先発を熱望する本人が断固拒否し、金額の話をする前の段階で決裂した。
平良は2年前の2022年にも、1回目の交渉で契約を保留した経緯がある。この時は、プロ入りから4年間、公式戦で1度も先発させてもらっていなかった平良が「チャンスも与えられないのは納得できない」と先発転向を強く要求。会見では「(先発をやりたい気持ちが)募って今、大爆発です」とぶちまけた。
結局、球団が折れる形で先発転向を承認。平良は翌2023年、23試合に先発して11勝7敗、防御率2.40の好成績を挙げ、自身の主張の正当性を実証している。ただ、先発転向2年目の今年は、右前腕の張りで戦線を離脱し、リハビリに3か月もかかったため、シーズン途中にリリーフとして復帰。来年から指揮を執る西口文也新監督が改めてリリーフ専念を望んでいることから、平良にとっては元の木阿弥、まるで2年前の再現映像のような交渉が繰り返されたのだった。
実は、2年前の契約更改交渉で話題となったのは、平良だけではなかった。今井達也投手が入団時から付けていた背番号「11」から「48」への変更を要望し、球団側を困惑させた。中継ぎ左腕として活躍し同年限りで引退した武隈祥太氏の背番号を継ぎたい──というのが真意だったが、活躍した選手の背番号が若い数字に替わることはあっても、自ら逆を望むのは異例。エース級の番号を与えた球団側の期待もあっただけに、当時の渡辺久信GMからは「本当にいいのか?後になって、やっぱり11番がいいとか言うなよ」と釘を刺された。
それでも今井の決意は揺るがず、今井は翌2023年に初の2桁勝利(10勝)。さらに今年は初の開幕投手を務め、初のタイトル(最多奪三振)も獲得する“有言実行”ぶりだった。また、高橋光成投手が初めてポスティングシステムでのメジャー移籍の意思を公にしたもの、同じ2年前の契約更改時だった。
主軸打者の相次ぐFAでの流出で“投高打低”の傾向が定着
「まず西武の投手陣は、個性的で自己主張の強いタイプが多い。しかも西武では近年、浅村栄斗内野手(楽天)、秋山翔吾外野手(広島)、森友哉捕手(オリックス)、山川穂高内野手(ソフトバンク)ら主軸打者が、次々とFAで流出し、めっきり“投高打低”の傾向が定着。せめて投手陣にはなるべく思い通り、気持ちよく働かせたいという球団側の思惑が、契約更改でモノを言える空気を醸成しているのではないでしょうか。そうでなくても、西武は資金力が決して潤沢でなく、本拠地球場の夏の蒸し暑さ、都会から遠いロケーションが、選手にとってマイナスポイント。球団側にとっては負い目になっています」
こう指摘するのは、スポーツ紙デスクだ。一方で、球団側の契約更改交渉担当者のキャラクターも関係していると見る。
「昨年までの渡辺GMは、自身の現役時代も踏まえて『選手たちの言い分、気持ちもよくわかる』と口にしていました。2年前に平良が保留した時には、『“大爆発”というのは、あんなものではない。俺の現役時代はもっとすごかったぞ』と笑っていました。今年から役割を引き継いだ広池浩司・球団副本部長兼編成統括(来年1月1日付で球団本部長に昇格)も『プロですから、交渉の席で自分の言葉でちゃんと交渉できるのは素晴らしいこと』と前向きにとらえているそうです」
また、西武投手陣にメジャー志向の選手が多く、実際にMLB球団から高い評価を受けていることも、契約更改交渉を複雑にしている。この点では、西武OBで、2019年以降メジャーで活躍している菊池雄星投手の影響が色濃い。既にポスティングシステムでのメジャー移籍を球団に要望している平良、高橋の他、今井もメジャー球団のスカウトの評価が高く、その後にも今年の新人王の武内夏暉投手、侍ジャパンの一員として国際試合の経験を積んでいる隅田知一郎投手らが控えている格好だ。
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