巨人の「甲斐拓也」獲得は本当に“最高の補強”か…球団OBが懸念する「打てない捕手」に厳しい“セ・リーグ特有の事情”
DH制ではないセ・リーグ
広澤氏はヤクルト時代、監督の野村氏が捕手の古田敦也氏に「捕手が一流かどうか、その真価が問われるのは二流のピッチャーをリードする時だ」と何度も諭す姿を間近で見ていたという。
「一流のピッチャーが登板する場合、捕手は単に座っているだけのほうが好結果をもたらす場合すらあります。気持ち良く投げてもらうことが何よりも重要だからです。そしてソフトバンクと巨人の投手陣を比較すると、やはりソフトバンクのほうに軍配が上がるでしょう。甲斐くんが巨人の投手を上手にリードできるかどうかは全くの未知数なのです。それよりも来季の巨人も貧打に泣かされる可能性が高いはずです。点を取られて負けるより、点を取れずに負ける試合のほうが多いでしょう。これは甲斐くんにとって逆風となるはずですし、何よりもセ・リーグはDH制ではありません」(同・広澤氏)
ここでポイントになるのがバントだ。阿部監督の生涯バント数は31と少ないのに対し、甲斐は186と6倍近い数字になっている。ちなみに小林は86、大城は41、岸田に至っては僅か11に過ぎない。
甲斐に批判が集中する可能性
「ソフトバンクで甲斐くんの打順は8番が基本でした。7番が出塁すると甲斐くんはバントで送り、9番打者に期待するという戦術がパ・リーグでは可能です。ところがDH制のないセ・リーグでは7番が出塁して8番が送っても、9番は投手なので意味がありません。セで理想の捕手は、例えば2023年のシーズンで8番が定位置だった阪神の木浪聖也くん(30)のようなバッティングができるタイプでしょう。打率2割6分7厘、出塁率3割2分0厘という記録を残しました。セの捕手はクリーンナップを担える長打力がなくとも、『つなぐ8番』という役割を担えるかどうかは重要な問題なのです」(同・広澤氏)
7番が出塁しても甲斐の凡打でダブルプレー。9番の投手もアウトで三者凡退。試合が進んでも巨人は0点に抑えられ、2-0や1-0のロースコアで競り負ける──これが甲斐にとって最悪の展開であることは言うまでもない。
「チームが勝っているのなら、甲斐くんの責任が問われることはありません。打撃不振でも、リードに問題があっても、首位を走っていればファンは声援を送ってくれます。問題は負けが込んできた時です。風当たりはFAで移籍した甲斐くんに集中する可能性があります。大型契約で入団するFA選手は、文字通り『優勝請負人』であることが求められるからです。甲斐くんが巨人ファンの強い期待に答えられないと、歯車がどんどん悪いほうに回転していく場合があるのです」(同・広澤氏)
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