巨人の「甲斐拓也」獲得は本当に“最高の補強”か…球団OBが懸念する「打てない捕手」に厳しい“セ・リーグ特有の事情”
巨人の「打てない捕手」問題
巨人の甲斐獲得を受け、改めて広澤氏に話を聞いた。すると「捕手を外部から補強せず、岸田くん、小林くん、大城くんの3人で回すべきという考えは変わりません」と言う。
「巨人が真に補強すべきは極めて優秀な、大物のバッテリーコーチです。私は以前から巨人に捕手の優れた指導者が不在であることを問題視し、様々な機会で指摘してきました。阿部監督は『自分がやる』と考えていたのかもしれません。実際に現役を引退すると二軍監督や一軍ヘッド兼バッテリーコーチなどを歴任してきました。ただし純粋なバッテリーコーチとして捕手の育成に専念する立場ではありませんでした。それはやはり残念なことだったと思います」
そもそも、なぜ巨人の正捕手は空席だったのか。小林が最有力の候補だった時期もあったのだ。しかしながら「巨人の正捕手は打者としても優れている必要がある」というポイントで合格する捕手はいなかった。
阿部監督は現役時代、4番を任されるほどのスラッガーだった。生涯打率は2割8分4厘、キャリアハイは2012年シーズンの3割4分0厘で、生涯本塁打は406本を記録している。ちなみに野村克也氏の生涯本塁打は657本で、王貞治氏に次いで歴代2位。そして阿部監督は歴代18位だが、捕手としては野村氏、田淵幸一氏に次ぐ堂々の3位だ。
甲斐も「打てない」捕手
阿部監督の打撃成績を巨人の3捕手と比較してみよう。年齢順に最もベテランの小林は通算打率2割0分4厘。キャリアハイは2割5分5厘で、通算本塁打は16本。阿部監督と比較して著しく劣るのは明白で、打撃が小林の欠点と言われていた。
大城の通算打率は2割6分2厘。キャリアハイは2割8分1厘で、通算本塁打は62本。岸田は2割4分3厘で、キャリアハイは3割0分2厘、本塁打は7本だ。2人とも小林よりは打つかもしれないが、やはり阿部監督と比べれば見劣りがする。
ところが、である。甲斐の打撃成績も良くはない。通算打率は2割2分3厘で、阿部監督どころか大城と岸田よりも劣る。キャリアハイは2019年の2割6分0厘で、阿部監督の3割には全く届いていない。本塁打も一桁のシーズンが散見され、通算で62本に留まっている。
「阿部監督に匹敵する強打者の捕手をFAで獲得したのなら、『だからこそ3人は正捕手になれなかったのだ』と誰もが納得するでしょう。しかし甲斐くんが入団することで、改めて『小林くんではダメなのか?』という論点が再浮上するのではないでしょうか。例えば“甲斐キャノン”は有名ですが、小林くんの強肩も素晴らしく、決して引けはとっていません。次の評価ポイントはインサイドワークですが、そもそも捕手のリードをどう評価するかは難しい問題です」(同・広澤氏)
[2/3ページ]