ロシア派遣の「北朝鮮兵」が味方を“誤射”も専門家は「当然の結果」…言葉の壁だけではない共同戦線を崩壊させる「3つの重大要素」とは

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セオリーを無視したロシア軍

 今回の誤射報道を受け、軍事ジャーナリストは「ロシア軍と北朝鮮軍が共同戦線を張るには戦略、訓練、ノウハウの3つが完全に欠如しています。これでは成功するはずがありません」と指摘する。

「まず戦略面から見てみましょう。もともとロシアも北朝鮮も国際的に孤立しており、その軍隊も多国籍軍に参加したり、他国軍との合同軍事演習を実施したりした経験が少ないわけです。言語の異なる2国の軍隊が長期間同じ釜の飯を食い、かなりの意思疎通が可能になったとしても、『できることなら共に戦うのはごめん被りたい』というのが普通の軍隊の本音です。どうしても共同戦線を展開する必要がある場合、その2国軍は別々に行動し、離れた地域で作戦に従事するのがセオリー中のセオリーなのです」

 だがウクライナ国防省は「北朝鮮軍の兵士はロシア軍の海兵隊と空挺部隊の一部に組み込まれて戦線に投入」と指摘したのは前に見た通りだ。「別々に行動する」という共同戦線の戦略セオリーを無視したのだから、同士討ちが起きたのは必然だと言える。

練度の低いロシア軍と北朝鮮軍

「次は訓練の面です。そもそも軍隊というものは自軍だけの作戦行動でも常に同士討ちのリスクを抱えています。そのため防止策の1つに『銃口管理』の徹底があります。例えば4人の兵士が最前線で行動する場合、先頭の兵士は銃口を水平に向け、いつでも撃てる体勢を保持して歩きます。一方、残りの3人は誤射による同士討ちを防ぐため、銃口は地面に向けて歩くのです。普通の軍隊なら徹底した訓練を実施し、銃口管理を兵士の頭ではなく体に覚えさせます。ところがロシア軍は、兵士の動員が国民の反対から中止に追い込まれ、高額報酬で志願兵を集めています。ネパール人の応募も確認されているほどで、兵士としての練度は非常に低いと考えられます。北朝鮮軍の兵士も似たレベルのはずで、そのためにチェチェンの特殊部隊を誤射してしまったのでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

 最後はノウハウだ。アメリカ軍は同士討ちの苦い経験を戦訓として蓄積し、その教訓から様々な防止ノウハウを構築してきたという。

「例えば1990年の湾岸戦争では、アメリカ陸軍のある部隊があまりにも進撃のスピードが速く、別の部隊が『あんな遠距離にいるのはイラク軍に違いない』と思い込んで攻撃したという同士討ちが発生しました。こうした教訓からアメリカ軍は敵か味方かの識別に“温度差”を利用しています。具体的にはアメリカ軍の戦闘車両には何の変哲もない格子状のパネルが装着されています。これは戦闘識別パネル(CIP)と呼ばれ、サーモグラフィーを通して見ると周辺より温度が低いパネルが暗く表示され味方だと分かるのです。こうしたノウハウをロシア軍や北朝鮮軍が持っているとは考えられません。また北朝鮮軍の兵士はロシア人とウクライナ人を見分けることも難しいはずです。今後も同士討ちが増えることこそあれ、減ることはないでしょう」(同・軍事ジャーナリスト)

註:ロシア西部の北朝鮮兵、週末の攻撃で大きな損耗か ウクライナ発表(CNN.co.jp:12月17日)

デイリー新潮編集部

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