ロシア派遣の「北朝鮮兵」が味方を“誤射”も専門家は「当然の結果」…言葉の壁だけではない共同戦線を崩壊させる「3つの重大要素」とは
ウクライナ国防省情報総局は12月14日、通信アプリのテレグラムに「北朝鮮の兵士が味方を誤射し、8人の兵士が戦死した」と投稿した。情報総局はロシア軍と北朝鮮軍の間で「言葉の壁が障害となっている」と分析。軍事ジャーナリストは「当初から予見されていたことであり当然の結果。今後もロシア軍と北朝鮮軍の間で“同士討ち”が起こる可能性は高い」と指摘している。
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ウクライナ軍は8月にロシアの国境を越え、西部クルクス州に奇襲攻撃を行い、一時は州内の1376平方キロメートルを占領していた。この面積を日本に当てはめると北海道釧路市の1362平方キロメートルに相当する。
当然ながらロシア軍は被占領地の奪還を目指した。その際、チェチェン共和国と北朝鮮が“援軍”として参戦した。
「8月からクルクス州でロシア軍と共に反攻作戦に参加したのが、チェチェン共和国の特殊部隊アフマトです。アフマトのアプティ・アラウディノフ少佐はロシアの国営テレビに出演して戦況を報告、常にロシア軍が優勢だと説明することで知られました。一方の北朝鮮軍は10月にクルクス州に入り、ロシア軍の軍服や武器を受け取って訓練に参加。ウクライナ国防省は約1万1000人の北朝鮮軍が州内に駐留していると見ており、その一部が今回の突撃作戦に投入されたと発表しました」
北朝鮮軍の兵士はロシア軍の海兵隊と空挺部隊の一部に組み込まれ、誤射した相手はチェチェン共和国の特殊部隊アフマトだったという。
同士討ちに人海戦術
「北朝鮮軍の兵士がアフマトの車両を誤射したことで同士討ちが発生したと見られています。またウクライナ国防省は北朝鮮軍に相当数の戦死者が出ていることも言及しました。12月14日と15日の戦闘で北朝鮮軍の兵士30人が死傷、3人が行方不明になったそうです。アメリカの国防総省も『北朝鮮軍の兵士が損耗を被ったことは確認した』とウクライナ側の発表を肯定。CNNがウクライナ軍に取材すると、北朝鮮軍の歩兵は『70年前と同じ戦術』で攻撃を仕掛けてきたと振り返り、自軍の損害を無視する前時代的な人海戦術が採用されていることを明かしました。これが事実なら、さらに北朝鮮軍の戦死者は増える可能性があります」(同・担当記者)
最初に北朝鮮軍の兵士がクルクス州の最前線に投入されたのは11月だった。アメリカのニューヨーク・タイムズ(電子版)は11月5日、「北朝鮮がウクライナとの戦闘に初めて参戦、当局者らが明らかに(North Korea enters Ukraine fight for first time, officials say)」との記事を配信した。
これを受けてデイリー新潮は12日、「ロシアの最前線に送り込まれた『北朝鮮軍』が次々に“惨殺”…囚人兵と同じ“捨て駒”扱いの悲惨すぎる実態」の記事を配信した。
深刻な「言葉の壁」の弊害
ウクライナ国防省は北朝鮮兵士の誤射について「言葉の壁」が原因だと発表した。だが11月の時点で専門家は言語の異なる2国の軍隊では意思疎通に問題が生じ、同士討ちの可能性が高いと指摘していた。11月12日の記事から、軍事ジャーナリストのコメントを再録してみよう。
《もし半分がロシア兵、半分が北朝鮮兵といった部隊を編成したとして、ロシア語と朝鮮語ではコミュニケーションが成立しません。1秒で生死が分かれる最前線の戦場で、指揮官と兵士、さらに兵士同士で会話ができないというのは致命的な欠陥です。これなら民間軍事会社のワグネルが採用した囚人兵のほうが、言葉が通じるだけまだマシだと言えるでしょう》
《意思疎通に難のある2国の軍隊が交差すると、最悪の場合は敵軍と誤認して攻撃し、同士討ちとなってしまいます。他にも火力支援の問題があります。歩兵が敵軍に向かって攻撃する際、後方の砲兵隊が砲撃で支援するわけですが、同じ国の軍隊でさえ誤射が発生し、自軍を砲撃してしまうことがあります。仮に北朝鮮軍の兵士が突撃し、後方にいるロシア軍が砲撃を担当するとして、意思疎通が難しければ誤爆の危険性は上昇します》
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