西山朋佳さんがカド番しのぎ「史上初の女性プロ棋士」まであと1勝 そもそも将棋界ではなぜ女性の活躍に「高い壁」があるのか

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女流棋士が男性棋士から初勝利を挙げるまで12年もかかった

 西山さんも奨励会三段まで昇段したが、惜しくも四段にはなれなかった。奨励会三段には「満26歳までに四段に昇段できなかった者は退会する」という厳しいルールがある。将棋指しに大器晩成型はほぼおらず、若いうちに一定のレベルに達しなければプロでの活躍は期待できないという考え方からくる、将棋界独特のルールだ。

 西山さんは年齢制限の直前に奨励会を自ら退会、四段の道は断念した。ただ、女性だけの「女流棋士」というプロ棋士制度があるため奨励会を三段で退会後、女流棋士三段になった。一方、奨励会を三段で辞めた男性にはこういう道は用意されておらず、将棋を指し続ける場合はアマチュアとして大会に出場するほかに道はない。

 女流棋士制度は1974年に創設された。しかし、発足当初の実力は男性棋士よりかなり劣り、男性棋士の棋戦にも一部が参加できるようになった81年以降、中井広恵女流名人(当時)が93年に男性棋士から初勝利を挙げるまで女流棋士は対男性棋士38連敗というさんざんな状況だった。

 肉体的に男女差があるスポーツと違い、頭脳競技である将棋においては本来、男女差はないはずだ。実際、囲碁の世界では男性と対等な条件でプロになっている女性がたくさんいる。にもかかわらず、将棋界ではなぜこれまで女性が男性と肩を並べてこられなかったのか。

「囲碁は感覚的な判断が重要な局面が多く、女性に向いている。将棋は徹底して理詰めなので男性が有利」という説もあるが、一番の要因は女性が将棋に関わってからの歴史がまだごく浅いことだろう。

イベントでは女流棋士は大人気

 囲碁を打つ女性は源氏物語絵巻にも描かれており、女性プレーヤーの歴史は長い。一方、「戦(いくさ)」のイメージが強い将棋を指す女性は現在でもまだ少なく、ひと昔前までは奇異な目で見られることさえあったという。

 女流棋士1期生の関根紀代子六段はかつて「私の若いころは町の道場で将棋を指すと人だかりができるほどだった。女性が将棋を指すようになってからまだ歴史は浅い。女流棋士の実力についても、もう少し見守っていてほしい」と話していた。

 こうした経緯があるため、女流棋士は長い間、男性と対等なプロではなく、将棋界に「花を添える」存在としてみられることが多かった。

「女流棋士は弱くたっていい」「将棋イベントでの司会などで活躍してくれれば十分」という、いまとなっては信じ難い声もかつての将棋界には根強かった。実際、将棋関連のイベントで女流棋士は男性の強豪棋士以上にモテモテとなることもある。

 そもそもプロ養成機関・奨励会に入った女性は西山さんを含めて過去に数人ほどで、最初からプロになりやすい女流棋士を目指す女性は多い。女流棋士は奨励会2級程度の実力があれば女流2級としてプロデビューできる。

 現在では「女流」という言葉自体が差別的なニュアンスを含むといった声もあるが、将棋界ではいまも女性のプロを女流棋士と呼ぶ。「正式なプロ棋士ではなく、あくまで女流という別扱いなんですよ」というささやきも聞こえる。

 男性と対等な女性のプロがいないことで、日本将棋連盟の運営においても女性の発言力は長年、弱かった。2010年までは女流棋士は棋士総会にも出席できず、女流棋戦の運営についても男性棋士だけで決めていた。現在は女流四段以上に限って棋士総会出席が認められている。

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