多くのアメリカ人が「原爆投下は正しかった」を譲れない理由…在米経験のある編集者が感じた「自己正当化」の実態

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自己正当化能力

 こうした説明をした後、このB先生は私の方を向き、こう言った。

「なっ、今私が言ったことはその通りだろ? お前は日本史も分かっているだろう。日本がやり過ぎて、世界の秩序をぶっ壊したから、アメリカが空襲をし、それでも降伏しなかった。このままいくと日本を壊滅せざるを得ないから、最小限の被害者にとどめるべく、広島と長崎に原爆を落としたんだ。そして、太平洋戦争は早く終わることができた。広島の原爆投下から9日、長崎からは6日、あのまま1946年まで続けていたらどこまで被害を受けていたか。だから、原爆は正しかったのだ!」

 これがアメリカにおける「原爆=正義」の論の根底にある。彼らは、原爆はより多くの犠牲を出さないために仕方なく使う手段である、という考えでいるのだ。もちろん、原爆投下はやり過ぎだったと考える人も一定割合で存在する。しかし、アメリカという国はとにかく自己正当化においては天才的な論を展開する。

 911同時多発テロを契機にアフガニスタンに侵攻し、タリバンは殲滅したものの、その後アフガニスタンはますます貧乏になった。結局大量破壊兵器などイラクにはなかった。だが、世界最強国だからということで、誰も彼らに批判はできない。結局原爆と核兵器批判もアメリカの前には無力となるだろう。今回の被団協のノーベル賞受賞がただのガス抜きにならなければいいと心から思う。アメリカを筆頭とした核保有国の自己正当化能力の高さは核廃絶の前には手ごわい。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ、佐賀県唐津市在住のネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』『よくも言ってくれたよな』。最新刊は『過剰反応な人たち』(新潮新書)。

デイリー新潮編集部

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