“経験不足の医師”や“金儲け優先医師”が混在…利用者急増中「在宅医療」の驚くべき裏側とは
医療においても「在宅」のニーズは高まるばかりで、訪問診療を行うクリニックが急増している。だが自宅という閉鎖空間ゆえに、“不健全な医療”がまかり通っている現実があるのだという。ブラックボックスの内側で、一体何が起こっているのか。当事者たちが明かす。(以下は「週刊新潮」2024年12月19日号掲載の内容です)
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東京都内在住の女性が、声を震わせながら言う。
「深夜に主人の様子がおかしくなって、在宅医療の先生に連絡をとったんです。でも、『大丈夫だから朝まで待って』と、結局診に来てはくれず……。見るに見かねて救急車を呼んだときにはもう手遅れで、数日後に主人は亡くなりました」
病気や加齢などによって通院するのが困難になった患者が、自宅で医療を受けられる在宅医療。「優しい先生が自宅まで診察に来てくれて安心」「親を自宅で穏やかに看取ることができました」などと、何かと良いイメージで語られがちな世界である。しかしそんな“美談”の裏には、知られざる“落とし穴”が潜んでいるのだ。
急増する「在宅医療」のニーズ
在宅医療に対する社会的ニーズは昨今、大きく拡大している。厚生労働省の「医療施設調査」によれば、病院以外で訪問診療を行う専門の診療所の数は、2005年には1万6920だったところ、2020年には2万187にまで増加。さらに1カ月の間で訪問診療料として保険算定された回数で見ると、2010年には69万8312回だった一方、2023年には191万882回と、3倍近い数値まで増えている(厚労省「社会医療診療行為別統計」より)。
「介護が必要な高齢の方や、終末期のがんを抱えていらっしゃる方を中心に、在宅医療の利用者は急増しています」
そう話すのは、関東や離島地域を中心に在宅医療クリニックを展開する医療法人社団「悠翔会」理事長で、内閣府・規制改革推進会議の専門委員も務める佐々木淳氏。
「高齢化によって通院の困難な方が増えたこと、『最期は自宅で迎えたい』というニーズの高まり、あるいは無駄な入院を減らして医療費を抑制せねばという社会背景などが重なって、在宅医療の需要が年々高まっているのです」(同)
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