「義父とお酒を飲んで涙が出そうに…」 “親の愛”を知らない49歳夫が育った、継母との温もりなき家庭
警察からの連絡
33歳のときに長男が、すぐ翌年、次男が産まれた。紗織さんは結婚と同時に転職していたが、その会社への早期復帰を目指して、いっそ年子で子どもを育てようと夫婦で話し合ったのだという。
「もちろん、向こうの家には本当に助けてもらいました。紗織が無理して、かなり早めに復職できたのも義父母が手伝ってくれたから」
長男が小学校に上がったころ、警察から隆正さんに連絡があった。父の訃報だった。父は実家とも生まれ故郷ともまったく関係のない街で亡くなっていた。
「その少し前に実家に行ったとき、父は近いうち旅行すると話していたんです。部屋を見渡したら、なんとなく女性の痕跡があった。僕が行くと言ったから女性は出かけたのかなと思って、夕飯も食べずに帰ると言うと、『おお、そうか』とホッとしたようでした。たぶん、その女性と旅行したんだと思いますが、ホテルの証言として女性がいたのは初日だけ。父はその後、数日間、滞在していたからひとりでいるとき亡くなったんでしょうね」
父の遺品を整理しているとき、継母と弟の電話番号を見つけた。父はまだ連絡をとっていたのだろうか。
「ある日、決意を固めて電話をしてみました。固定電話でしたが、出たのは弟だった。僕は久しぶりに話せてうれしかったんですが、弟はどこかぶっきらぼうというか愛想がなくて。とにかく会おうと僕からしつこく誘ってやっと会いました」
外で何度か会い、家にも来てもらった。弟は無口だったが、紗織さんは「あなたの弟さんに会えるとは思わなかった」と一生懸命もてなしてくれた。だがその後、弟は行方がわからなくなる。
「あいつもいろいろなものを抱えて、消化しきれずに苦しんでいるのだろうと察しましたから、しばらく放っておこうかなと……」
それが5年前のことだ。弟とは、これからゆっくり関係を育んでいこうと思っていた。それなのに……。【後編】では隆正さんの家庭が破壊されゆく過程を紹介している。
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