「バラエティ司会」だけじゃない…時代劇俳優「山城新伍」本当の魅力 「杉良太郎」「高橋英樹」をスターにした脇役の妙

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演出・監督も

 私が「山城のベスト参謀役」と思うのは、ドラマ「江戸特捜指令」(76~77年・毎日放送)の夢介だ。舞台は幕末。黒船来航以来、不穏な世の中を取り締まる特殊チーム「隠し目付」のメンバーは、それぞれが「表の顔」を持っていた。リーダーの中村敦夫は戯作者で、捜査の筋書きを担当。山城はからくり時計職人で、サブリーダー格だ。中村はチームを召集するため物干し台で太鼓をどんどこ打ち鳴らすという変わり者で、「ここは潜入だ」などと奇想天外な筋書きを書いてメンバーの芸者(五十嵐淳子)らを危機に陥れてしまうので、サブリーダーの山城は常にフォローの日々。いざとなると、からくりで敵の目をごまかして味方を救出するのである。

 ドラマ「付き馬屋おえん事件帳」(90~93年・テレビ東京)では悪人を闇に葬る吉原の料理屋の女将おえん(山本陽子)を助ける花板の新五郎を演じた。このドラマでは演出も担当。山城は他にも、映画「ミスターどん兵衛」(80年)、「女猫」(83年)、ドラマ「大江戸捜査網」(90年・テレ東)などを監督した。ほりのぶゆき原作のギャグ漫画「江戸むらさき特急」に惚れ込み、映像化を実現したこともある。風間杜夫が演じる隠密同心・十文字隼人が「死して屍、拾う者なし」という「大江戸捜査網」の名セリフに悩んで労働条件改善を訴えるなど、豪華キャストが驚きのパロディを連発させた。

東映スター伝説のCM

 また「仁義なき戦い」シリーズなどに出演した映画仲間との交友も有名だ。そのひとり、北大路欣也と出演したドラマ「暁に斬る!」(82~83年・フジ)は、男たちの友情を描いて評判になった。

 足抜けした女(名取裕子)と逃げて夫婦になった過去を持つ町医者・並木平四郎(北大路)は、許せぬ悪を成敗するため封印した刀を持って戦う。山城は平四郎の親友役。平四郎の戦いを影から助ける。色っぽいお姐さん(五月みどり)の誘いも断り、男の友情に生きる山城。なぜか平四郎としばしば風呂に入る入浴シーンも名物になった。

 ちなみに、90年、山城と北大路は、盟友である梅宮辰夫、松方弘樹、千葉真一とともに、「バブルスター」のCMで泡の立つ風呂に入浴。東映スター5人が揃った伝説のCMとして語り継がれている。

 今年は12月28日に時代劇専門チャンネルで出演作のドラマ「新春仕事人スペシャル 必殺忠臣蔵」(87年・テレビ朝日)が放送される。

 浅野内匠頭(沖田浩之)の刃傷事件により赤穂浪士は討ち入りを果たしたが、その吉良上野介(日下武史)は影武者!? 切腹が迫った大石内蔵助(山城)の依頼で中村主水(藤田まこと)ら仕事人ならではの仇討ちが始まるというストーリー。「必殺」の劇中劇のような「忠臣蔵」だが、堂々とした内蔵助で一味違う“時代劇の山城新伍”を見ることができる。

ペリー荻野(ぺりー・おぎの)
1962年生まれ。コラムニスト。時代劇研究家として知られ、時代劇主題歌オムニバスCD「ちょんまげ天国」をプロデュースし、「チョンマゲ愛好女子部」部長を務める。著書に「ちょんまげだけが人生さ」(NHK出版)、共著に「このマゲがスゴい!! マゲ女的時代劇ベスト100」(講談社)、「テレビの荒野を歩いた人たち」(新潮社)など多数。

デイリー新潮編集部

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