アカペラは「実は即興性がゼロ」、ゴスペラーズが藤井フミヤに驚かれた楽屋での一コマとは? 新アルバムに込めた想いも吐露
ゴスペラーズはK-POPブームを先取りしすぎた? Little Glee Monsterへの印象も明かす
そして、Spotify第12位に「ヒカリ」、第23位に「In This Room」と、いずれも’18年のアルバム『What The World Needs Now』の先行シングル曲がランクインした。 これらは、海外の複数の作家にメンバーの安岡が作詩で加わって1曲を作り上げていくというスタイルで作られているが、平成後期の作品ながら、令和の今、K-POPグループが歌い踊っていそうな、クールなR&Bとなっているのが興味深い。
黒沢「これは……、自分たちでもよく言っていますが、リリースするのが早すぎた(苦笑)。僕らがこういうメロウな雰囲気を出してやってきたような路線が、ちょうどK-POPのほうでブームになるんですよ。 NewJeansのY2Kブームもそうですよね。この前作アルバム『Soul Renaissance』で’90年代のR&Bにもう一度向き合ったので、じゃあ次は、僕たちがブレイクした’00年あたりを、と思ってやってみたら、めちゃくちゃ今っぽい曲調になりました。だから、むしろ若いリスナーの方がこのアルバムの良さに気づいてくれるかも。この31位にある『Sweetest Angel』を書いてくれたMayu Wakisakaさんなんて、まさに昨今、若手グループへの提供作(SixTONES、ITZY、ME:Iなど)で大活躍ですよ。だから『What The World Needs Now』収録曲を聞き返すたびに、“今リリースしていたら……”なんて思っちゃいます(笑)」
酒井「僕らはR&Bに日本語を乗せるというのを長年やってきたぶん、いくらか洗練されていると思うので、ぜひ聴いてみてください」
ただ、Spotifyを使いこなしている黒沢には、気になることがあるようで、
黒沢「実は、’21年に『アカペラ2』をリリースするにあたって、今、ストリーミングで人気の楽曲のコード進行も勉強して曲を作ってみたんですが、アカペラは音圧が通常の曲と異なるせいか、(自動生成される)プレイリストに選ばれづらいみたいなんですよ」
しかも、アカペラは事前準備も大変……。
黒沢「アカペラは5人で自由にやっているように見えますが、実は即興性がゼロなんです。以前、楽屋で練習しまくっているのを藤井フミヤさんに見かけられた時、“へー、そこは(練習を)はしょれないんだね。しっかり作り込んでるんだ!”って驚かれていました」
ともあれ、流行の先をいったり、はたまた流行に合わせてみたり、そのどちらも自分たちの色で染められるのは、彼らの歌唱力あってのことだろう。なお、流行の先取りといえば、’12年のアルバム『STEP FOR FIVE』内で酒井の一人リード曲として発表した「2080」も、まるで令和のシティ・ポップ・ブームをふまえたような作風で驚かされる。
酒井「これも出すのが早すぎました。例えば、海外のWeekendあたりは最近、’80年代の雰囲気をうまく取り入れて注目されていますからね。どなたか、こちらの記事をお読みの方、この曲取り上げてくれませんか~?(笑) ’80年代の曲は、どこか未来を想像させるものがあってワクワクしますよね」
彼らと同じくハーモニーやアカペラを持ち味としているボーカル・グループでは、女性6人組のLittle Glee Monsterもいるが、どういった存在なのだろうか。
黒沢「彼女たちは代役も立てられないほど貴重な存在ですよ。ずっと歌い続けてほしい。動画サイトでは、他にも一人で多重コーラスをやったり、何人かで音源を持ち寄ったりする人はいるんですが、継続的にステージで活動できる人たちはなかなか現れませんからね」
酒井「僕らがブレイクするまで時間がかかったように、ボーカル・グループが大変な中で活躍しているのは頼もしい限りで、まさに待望の後輩ですよ」
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