ゴスペラーズ、30年間“メンバー入れ替えなし”で活動し続ける秘訣を明かす 「周りからも、そろそろギネス記録? と言われるんだけど……」

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メンバー同士で持ち味を生かし合い、絶妙なバランスのグループに成長

‘05年ごろ、グループの活動を休んで、個々のメンバーが活動したこともプラスに働いたのだろうか。

黒沢「僕はソロ活動、安岡も’10年からソロを始めたかな。北山はユニット(Kitago-yama)を組んだりソロも始めてみたり、それが刺激にもなりましたが、何より“違うところに行っても、ホームグラウンドはやっぱりゴスペラーズだ”という安心感があって、そのうえで自由にやっています。あの時期、村上と酒井がゴスペラッツ(ラッツ&スターの3人と、ゴスペラーズの2人による期間限定ユニット)に参加したのも、きっと同じ心境でしょうね」

酒井「ゴスペラッツは、他の3人がお休みしている時期に、ちょうど鈴木雅之さんからお誘いがあり、喜んでお受けしました。いろんなところでゴスペラッツとして活動するなかで、ラッツ&スターの往年のヒット曲の爆発力を目の当たりにしました。当時の振り付けやステージングをしたり、僕らが参加して新たなハーモニーを作ったりしたら、お客さんに大変喜んでいただいて、本当に勉強になりました」

 5人のメンバーのボーカル担当のみならず、そのキャラクターや、楽曲制作時の役割まで見事に分散しているのも絶妙だが、そもそも最初のメンバー選抜時にバランスを考えていたのだろうか。

黒沢「僕と村上はもともと高校3年の時にアカペラをやっていただけで、バランスなんて考えてなかったですよ(笑)。その後も、自分たちと仲が良くて、ちゃんと歌えるメンバーを集めていった感じで、酒井が打ち込みで音楽を作れて、安岡が作詩もできる、という理由では選んでいませんね。北山も、いわゆるベースの部分を歌えるからありがたかったのだけれど、緻密なアレンジができるとはまったく思っていなかったし」

酒井「それぞれ今に至るまで伸びた結果ですね。このグループでナンバーワンの詩を書くのは俺だ、いや、俺だって争うんじゃなくて、“そこは安岡が書いてよ”、“その分、和音のことは誰より細かい北山に担当してもらおう”と協力体制がしかれていくなかで、一人ひとりが得意分野で力をつけていきました。それで、カレーのことは、黒沢さんに任せたと」

黒沢「だから、俺もカレーの仕事をするようになった……と。いやいや、大好きだけど、そこは違うでしょ!(笑) とにかく、自分たちでも被らないように努力しているというのはありますね」

 今回、ゴスペラーズから二人のメンバーに登場してもらったが、質問への答え方をとっても、大筋となる部分は年上の黒沢が切り出しつつ、細かな説明が必要な部分は酒井が担当するなど、会話のリレーションが抜群だった。同時に、そこから醸し出される二人の雰囲気からも、30年の歴史が感じられた。 長く続く秘訣が、結局のところ、童心に返って互いに足りない部分を補い合うということだが、それは例えば、小学生のころに周囲と協力して学級新聞を作ったり、お楽しみ会の出し物を考えたりという体験と共通していているはずだ。二人への取材を通し、原点に立ち返ることの大切さを改めて学んだ気がした。

 最終回となる【インタビュー第3回】では、更なる隠れ名曲やデビュー30周年記念作について語ってもらおう。

【INFORMATION】
◎30周年記念EP「Pearl」発売中
■収録曲
1. F.R.I. [作詞・作曲:黒沢 薫、酒井雄二、北山陽一 編曲:Sam is Ohm]
2. パール [作詩・作曲:黒沢 薫、北山陽一、安岡 優 編曲:Joshua Leung]
3. Dear my girl [作詩:安岡 優 作曲:村上てつや、酒井雄二、妹尾 武、K-Muto 編曲:K-Muto]
4. 24/7 [作詞・作曲:村上てつや 編曲:本間将人]
5. 東京スヰート 2024 [作詞・作曲:村上てつや 編曲:笹路正徳]

◎30周年記念カップリングコレクションBOX 12月18日(水)発売
■30th Anniversary Coupling Collection BOX「G30 -Beautiful Harmony 2-」
全シングルのカップリング曲をすべて収録したカップリングコレクション。シングル曲同様に長く愛され続けている名曲達をリマスタリングでコンパイル。全60曲CD5枚組のカップリングコレクションBOX。

◎30周年記念ライブ開催
■ゴスペラーズ30周年記念祭@日本武道館
2024年12月20日(金) OPEN 17:30 / START 18:30
2024年12月21日(土) OPEN 16:00 / START 17:00

■ゴスペラーズ30周年記念祭@大阪城ホール
2025年1月13日(月・祝) OPEN16:30 / START 17:30

どちらも全席指定 ¥10,000(税込)。詳しい情報は特設サイトにて

【ゴスペラーズ プロフィール】
村上てつや(’71年生まれ)、黒沢 薫(’71年)、酒井雄二(’72年)、北山陽一(’74年)、安岡 優(ゆたか)(’74年)からなる5人組ボーカル・グループで、メンバー自ら作詞、作曲、編曲も手がけることも。
‘91年、早稲田大学のアカペラ・サークル『Street Corner Symphony』内で結成され、メンバーチェンジを経て、現在のメンバーに。’94年12月21日、シングル「Promise」でメジャーデビュー。’00年8月のシングル「永遠(とわ)に」がロングセールスを記録し、’01年3月のシングル「ひとり」でアカペラ作品としては日本音楽史上初のベスト3入りを果たし、初本格的にブレイク。以降、「星屑の街」「ミモザ」などヒット曲多数。他アーティストへの楽曲提供、プロデュース、ソロ活動などでも才能を発揮し、日本のボーカル・グループのパイオニアとして活躍中。

臼井孝(うすい・たかし)
人と音楽をつなげたい音楽マーケッター。1968年、京都市生まれ。京都大学大学院理学研究科卒業。総合化学会社、音楽系の広告代理店を経て、'05年に『T2U音楽研究所』を設立し独立。以来、音楽市場やヒットチャートの分析執筆や、プレイリスト「おとラボ」など配信サイトでの選曲、CDの企画や解説を手がける。著書に『記録と記憶で読み解くJ-POPヒット列伝』(いそっぷ社)、ラジオ番組『渋谷いきいき倶楽部』(渋谷のラジオ)に出演中。データに愛と情熱を注いで音楽を届けるのがライフワーク。

デイリー新潮編集部

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