ゴスペラーズ、30年間“メンバー入れ替えなし”で活動し続ける秘訣を明かす 「周りからも、そろそろギネス記録? と言われるんだけど……」

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記録と記憶で読み解く 未来へつなぐ平成・昭和ポップス ゴスペラーズ(全3回の第2回)

 この連載では、昭和から平成にかけて、たくさんの名曲を生み出してきたアーティストにインタビューを敢行。令和の今、Spotifyなどの音楽ストリーミングサービス(サブスク)で注目されている人気曲をランキング化し、各曲にまつわるエピソードを深掘りすることで、より幅広いリスナーにアーティストの魅力を伝えていく。

 今回は、2024年にメジャー・デビュー30周年を迎えるゴスペラーズの黒沢 薫、酒井雄二へのインタビュー第2弾。前回の記事では、「永遠(とわ)に」「ひとり」で大ブレイクを迎える前後のエピソードを多数語ってもらったが、今回は、彼らの人気の要素でもあるカバー曲について伺っていこう。

カバー曲人気第1位の「ウイスキーが、お好きでしょ」はハイボールの人気上昇にも貢献

 Spotifyの再生回数ランキングを見てみると、カバー曲はTOP10内に4作もランクインするほどの人気ぶりだ。

 第5位に「ウイスキーが、お好きでしょ」(オリジナル:石川さゆり)、第6位「やさしさに包まれたなら」(荒井由実)、第8位「ロビンソン」(スピッツ)、そして第9位に黒沢 薫が作曲を手がけ三浦大知が歌った「Keep It Goin' On」のセルフカバーが続く。

 まずは、第5位の「ウイスキーが、お好きでしょ」を歌うことになった経緯を尋ねてみた。

酒井「’00年代後半、サントリーさんから、“ハイボールを復興したい”というお話がありまして、その新たなキャンペーンとして、’90年代に石川さゆりさんが歌われた『ウイスキーが、お好きでしょ』を、われわれが新たにアカペラでカバーすることになりました。アカペラだと、雰囲気がガラリと変わったことや、そのCMの女性店主役として小雪さんが出ていらっしゃったことで、ハイボールのさらなる快進撃が始まったそうなんです」

 確かに、同シリーズのCMは、その後も竹内まりや、田島貴男と「ウイスキーが、お好きでしょ」のカバーが続き、話題となった。’00年代前半のアカペラ・ブームにとどまらず、ハイボールの火付け役にもなっていたとは!

酒井「この曲はアカペラだと全く違う聴こえ方をするので、アカペラの持つパワーを感じつつも、とても注意深く歌っています」

黒沢「上位4曲『ひとり』『ミモザ』『永遠に』『星屑の街』のヒットがなかったら、この『ウイスキーが、お好きでしょ』が1位というのがすごいですね。オリジナルを歌われている石川さゆりさんのパワーもあってこその人気なんでしょうね」

 そして、第6位「やさしさに包まれたなら」と第8位「ロビンソン」は、いずれも’13年のカバー・アルバム 『ハモ騒動』の収録曲。本作は、’30年代の猫のケンカを描写した、日本最古のアカペラと言われる「猫騒動」から、’10年代のブルーノ・マーズ「Just The Way You Are」まで収録されており、洋邦の区分も時代も飛び越えた意欲のカタマリのような作品となっている。

酒井「この作品を出すまでに、オリジナルアルバムを13枚も作ってきたので、そろそろカバー・アルバムを出してみようかと。でも、選曲にかなり手こずってしまい、結局、オリジナルと同じくらい長時間をかけることに(笑)」

黒沢「メンバーとスタッフで何度も話し合った上で選曲したのに、いざプリプロダクションをして、自分たちで声を出してみたら、全然ダメでボツになった曲も結構あるんですよ。確かな名曲を選んだのに、われわれの声で歌っても、必ずしも名曲にはならなくて」

酒井「“歌い継がれるべき作品を”という観点で選曲しました。この『やさしさに包まれたなら』や『ロビンソン』の何がすばらしいかというと、僕たちがアカペラで歌っても、オルゴールになっても、スーパーで流れるインストになっても良い曲なんですよ。そういう点で、勝ち上がって採用になりました」

黒沢「僕らはハーモニー・グループなので、コード進行にうま味のある楽曲を選んでいて、『やさしさに包まれたなら』は、声を重ねてみると、オリジナルとは異なる輝きが生まれて、それがまた良いんですよね」

 なお、同アルバムでは、美空ひばりの「真赤な太陽」(Spotify38位)をカバーしているのも印象的。パワフルなアカペラに加え、かなり大胆なメロディーの改変もあって迫力満点な仕上がりに。明らかに、“ちょっと歌ってみた”というようなカバーとは段違いなのだ。

酒井「『真赤な太陽』は、われわれが学生時代に所属していたアカペラ・サークル"Street Corner Symphony”にて、うちのリーダーの村上がアレンジしたバージョンを歌っているんですよ。彼が若かりし頃のものですから、ソウル歌謡のようで、洋楽テイストもあるという、かなり思い切ったカバーで、アマチュアの良さも加わったガッツのある感じになっています。

 その『真赤な太陽』が、アマチュア時代にライブの盛り上げ曲として重要な役割を果たし、その後、“誰のアレンジだか知らないけれど……”と、詠み人知らずのような形で、日本中のアカペラ・サークルに伝播していったんですよ!」

黒沢「あの頃、村上は口伝いでこの曲を教えていたので、譜面も作っていないんですよ(笑)。それを誰かが譜面に起こして、知らない街の知らない大学サークルで、このアレンジで歌っているという状況になっていたので、このタイミングで、“オリジナルは、われらゴスペラーズなんだ”ということを示すために録音しました。でも今、同じアレンジでやれと言われても頷かないでしょうね」

酒井「これだけオリジナルを大幅に変えていたら、CDに収録できるのかな……と不安だったのですが、その後、美空ひばりさんの公式トリビュートライブに呼んでいただいて、この『真赤な太陽』を披露する機会があり、喜んでもらえました」

 さらに、同アルバムでは、第20位にランクインしているスターダスト☆レビューの「夢伝説」で本家と共演しているのも興味深い。

黒沢「スターダスト☆レビューさんは、バンドでありつつ、アカペラのアルバム『CHARMING』も出されていて、日本語アカペラの先駆者としてずっとリスペクトしつつ、サークル時代からカバーしていたんです。デビューしてから、スタレビさんのイベントにも呼んでいただける関係になったので、晴れてここで録音した次第です」

 スターダスト☆レビューといえば、ライブのトークがとても長いことで有名だが、イベントではどうだったのだろう。

黒沢「トークの長さと言ったら、さだまさしさんか、スタレビさんかってくらいですよね。共演した際には、僕らを必ずいじってくれます。僕らも、デビュー間もない頃は、5人とも会場でウケるまで喋ろうと必死だったから、その頃は長かったかも。その後、一人ずつ爆笑なんて取れないということが分かって、最近ではウケなかったらサラっといくし、話の入口と出口をしっかり決めて話しています。そうしないと、お客さんが帰れなくなっちゃう(笑)。MCのバランス感覚というのも、30年間で身につきましたね」

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