“料亭”経営者が逮捕で大阪「松島新地」に注目…飛田新地との大きな違いは「おっとりとした街の雰囲気」と「料亭の設備」
飛田新地と松島新地
松島新地は、遊郭の面影が残り、実際はいわゆるちょんの間として機能する“料亭”が集まる街区である。同様の地が大阪市内にもう1カ所あり、それが西成区の飛田新地だ。
両新地とも、玄関先に若い女性がいて、中高年女性の客引きが道を歩く男性に、「お兄さん、遊んで行ってや~」と誘う。
男性は往来しながら女性の品定めをし、決めると靴を脱いで料亭の階段を上がる。2階には小部屋があり、多くの場合、ローテーブルと布団が置かれている。何しろ料亭だから、まず飲み物とおつまみ一品、または菓子が供される。後に女性との「自由恋愛」に発展して性的サービスを受ける。両新地ともそうした仕組みがかなり知られていて、近年はインバウンド需要も少なくない。
戦前は遊郭だった(松島新地は別の地に創設。空襲に遭い現在地へ移転)が戦後に赤線となり、1958(昭和33)年の売春防止法施行後に、知恵を絞って生き残ってきたのだ。10数年前まで女の子の募集に苦労したが、以降は「手っ取り早く収入を得るため、セックスワークを」と自らの意志で応募してくる女性が増えたと聞く。
そんな松島新地と飛田新地には、異なることが2つある。
1つはその規模と雰囲気だ。飛田新地は約400メートル四方。碁盤の目状に細い道が通っており、約160軒が密集するが、松島新地はほぼ同じ広さの中に約80軒。道路は車が十分にすれ違える広さだ。「メイン通り」以外は、料亭が点在。マンション、ビル、飲食店、郵便局、自動車板金工場なども散見し、傍目に不思議なほど、周辺と共存している。
もう1つは、松島新地は風俗業界的に「おっとりしている」とされること。飛田新地は「しのぎを削る」を絵に描いたような活気があるが、松島新地は経営陣も客引きも女性も「ゆったり」「おっとり」だとか。
「私の方が寒いわ。おおさぶ~」
11月半ばのある日、午後から夕刻にかけて現地を実際に歩いてみたときのこと――。
地下鉄駅から非常に近い。大阪メトロ中央線九条駅の6番出口を出ると、活気のある「ナインモール九条商店街」だ。ものの2分ほど歩いて左に曲がると、チューリップ型街灯やおそろいの提灯が見えてくる。
松島新地街区には、年季の入った建物あり、モダンな新築建物あり。それぞれにもちろん女性がいるが、座布団の上にちょこんと座る飛田スタイルではなく、ほとんどの料亭にはカウンターが設けられ、奥に収まっていらっしゃる。上半身しか見えないのだが、バストがとても大きく、その露出度が非常に高い女性が多いようだ。ふと聞いてみる。「胸、寒くない?」と。「ふふ。大丈夫ですよ」と女性が返し、
「この子ら、足元あったかくしてるから。私の方が寒いわ。おおさぶ~」
客引きさんがそう続け、笑った。好感度が上がる。しかも、聞きしに勝る歩きやすさだ。車も通れば、塾に通う中学生風の自転車も頻繁に通る。そんな中を、品定めする男性も行きつ戻りつ。30代IT関係風の男性二人の背中に「すみませ~ん」と声をかける。
「取材で来てるんですけど、ここ松島新地で料亭の経営者がこの前逮捕されてはったでしょ~。そういうの平気ですか?」
一瞬目が怖かったが、一人が、「そのややこしい店、もう閉じたわけだから、逆に安全では?」とおっしゃる。もう一人が「つまんないこと言って水をささないでくださいよ。僕らはこっちのほうが好きなんだから」と続ける。
とっさに「こっち」は、「あっち=飛田」の対語だと推察。「飛田、苦手なんや」と呟いてみた。
「そう。さすがにシャワーないのはどうもね」
松島新地の料亭には、飛田にはないシャワールームがついていて、コトの前後に使えると教えてくれた。
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