選手層が“厚すぎる”という「ソフトバンク」の構造的問題 他球団が狙いを定める“人材の宝庫”の実態
ソフトバンクは人材の宝庫
今年5月、プロ野球選手会が発表した外国人選手などを除く球団別平均年俸でソフトバンクは6806万円でトップ。ここに4年総額40億円のロベルト・オスナ(29)のような大型契約を結んだ外国人選手がいて、さらに57人の育成選手も抱えていた。
NPB関係者によれば、「巨人、阪神などの人気球団は約220億円の年間総支出があると聞いているが、ソフトバンクは参稼報酬(人件費)とキャンプ費用、施設維持費だけで両球団を超える」そうだ。
球団を持つオーナーとグループ会社がチーム強化に熱心な証でもあるが、その選手層の厚さが選手のモチベーションには結びつかないこともあるようだ。ソフトバンクは今オフ、育成契約を含む23人の選手に「戦力外」を通達し、そのなかには同時に育成契約を打診された支配下選手や、育成での再契約を打診された選手もいた。即答ではなかったそうだが、「また支配下を目指してというのは気持ち的に無理」と断り、12球団合同トライアウトを受験した選手も少なくなかった。
「中には他球団と育成契約を結んだ選手もいました。育成からやり直すにしても、ソフトバンクに残るより、一軍の試合に出る可能性が高いと踏んだからです」(前出・同)
その一人が、埼玉西武と育成契約を交わした内野手の仲田慶介(25)だ。仲田は21年育成ドラフト14位でソフトバンク入りし、今年3月に支配下選手登録を掴んだ。一軍でも24試合に出場して、打率2割1分4厘、ファームでも88打席に立って4割強の高打率を残している。ファンも結果を残した若手の戦力外通達には驚いていた。
また、リチャードの来季残留が決まった現役ドラフトの直後、平沢大河(26 =内野手)を獲得した埼玉西武サイドから聞かれたのは、「二塁がレギュラー争いの激戦区になる」という言葉だった。今季、127試合に二塁手で出場した外崎修汰(31)の三塁コンバートによるものだが、「平沢はもちろん、児玉亮涼(26)、滝沢夏央(21)、仲田で正二塁手を争う図式」(西武担当記者)とのことだ。
同じ育成契約でも、単に支配下を目指すよりも一軍レギュラーを争うほうが、張り合いもある。これが「チーム残留を断った気持ちの問題」である。
「今オフ、同じくソフトバンクから戦力外を通達された左腕の笠谷俊介(27)はDeNAへ、三浦瑞樹(25)は中日入り、佐藤琢磨(24)もヤクルトと契約しました。この3人の左腕投手は全員、新天地では 育成選手での入団となりますが、他球団のほうが試合出場のチャンスがあると見たんでしょう。また、他球団もソフトバンクは人材の宝庫と見ています」(NPB関係者)
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