NY州では“前科”を抹消…「大麻合法化」で社会はどう変わるのか 販売ライセンスに税金、罰則について元マトリ部長が徹底解説

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罰金が科されることも

 税収は州が設置した「大麻歳入基金」に預託され、一部は大麻合法化プログラム等の運用費として、残りは以下に挙げるようなNY州の事業に充てられているという。その内訳は、〈教育費(40%)、不当な影響(差別など)を受けてきたコミュニティへの補助金(40%)、薬物治療及び公的教育基金(20%)〉とされる。

 大麻市場が、また、大麻関連の税収がどれほどの規模になるかはまだ不明だが、「NYの大麻市場は12億ドル(約1850億円)規模に発展する」と州は期待しているようだ。

 もちろん、法律に違反した場合は諸々の罰則が適用されることはいうまでもない。法定量を超えて大麻を所持すれば、最高200ドルの罰金が科される。大麻使用が許可されていない公共の場(公園などはすべて禁止)で大麻を使用したら、最高25ドルの罰金か、20時間の社会奉仕活動が命じられることになる。悪質な密輸事犯等は連邦法が適用され、刑事事件として処理されるのだ。

 一方で、新法の下では大麻の所持・使用が合法となるため、過去の“大麻犯罪記録”は抹消される。“抹消”とは、裁判での有罪判決がまるでなかったかのように扱われることを意味する。そして、有罪判決が取り消されると、運転免許や資格を停止・剥奪するといった欠格事由も消滅することになる。

第2回【合法化のせいで「違法大麻が蔓延」する皮肉な理由 大麻を合法化したNYでいま何が起きているのか】では、合法化がもたらした不都合な果実について詳報。合法化したのに“違法大麻”が増えるカラクリに迫る。

瀬戸晴海(せと はるうみ)
元厚生労働省麻薬取締部部長。1956年、福岡県生まれ。明治薬科大学薬学部卒。80年に厚生省麻薬取締官事務所(当時)に採用。九州部長などを歴任し、2014年に関東信越厚生局麻薬取締部部長に就任。18年3月に退官。現在は、国際麻薬情報フォーラムで薬物問題の調査研究に従事している。著書に『マトリ 厚生労働省麻薬取締官』、『スマホで薬物を買う子どもたち』(ともに新潮新書)、『ナルコスの戦後史 ドラッグが繋ぐ金と暴力の世界地図』(講談社+α新書)など。

デイリー新潮編集部

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