NY州では“前科”を抹消…「大麻合法化」で社会はどう変わるのか 販売ライセンスに税金、罰則について元マトリ部長が徹底解説

  • ブックマーク

犯罪歴のある人に“優先枠”

 たとえば大麻の生産・流通・販売業者も、NY州大麻管理局(OCM=Office of Cannabis Management)からライセンスを取得しなければならない。ライセンスを取得した販売店は「法定調剤薬局(legal dispensaries)」と認定され、店頭に「調剤薬局検証ツール(Verification Tool)」が掲示される(添付資料参照)。

 興味深いのは、ライセンス申請は“大麻事犯で有罪歴のある人”が優先され、販売許可のライセンス申請の半数はその枠に充てられていることだ。これを「社会的公平ライセンス申請(social equity licenses application)」という(過去の贖罪を意味しているのだろうか……。何ともコメントし難い制度である)。

 加えて、販売される“商品”には、州が許可した製品(正規品=NY cannabis)であることを証明する「製品ラベル(Universal Symbols)」が貼付される(添付資料参照)。

 販売製品は多種類に及び、吸煙用としては「紙巻き大麻((Pre-Rolls=Joints)」、「濃縮物(Concentrate)」、「パイプ&ボング用大麻(花穂部分)」、「加熱用リキッド(Vape)」など。

 食用(Edibles)として、チョコレート、クッキー、ブラウニー、グミ、キャンディーなどがある。その他にも、チンキ(Tinctures=アルコールに溶解し味付けしたもので、スポイドや注射器で舌下に滴下して使用)やトローチ、カプセル、塗布用大麻(ローション、軟膏等)といった商品が販売されている。

「大麻税」

 合法化以降、かなり細かい点に至るまで行政が管理していることが分かる。それは“税”にまつわる内容も一緒だ。

 大麻を合法化する目的として、税収増による財政健全化を挙げる自治体は少なくない。つまり、これまで反社会勢力の資金源となっていた大麻に、今度は税金を課すわけである。具体的には、購入する人は「大麻税」及び「消費税」を支払うことになる。

「嗜好用大麻」にかかる大麻税は、THCの含有量(パッケージに記載されている)と、製品形態に基づいて異なる3つの税率に分けられる。

「食用」にはTHC1ミリグラムあたり0.03ドル、「濃縮物(ワックス、粉砕物、リキッド、樹脂など)」には、1ミリグラムあたり0.008ドル、大麻の花などの「花穂部分」には1ミリグラムあたり0.005ドルといった具合だ。

 たとえば「THC60ミリグラムを含有する大麻チョコレート」を50ドルで買ったとしよう。この場合の大麻は「食用」なので「60×0.03=1.8ドル」が大麻税となるわけだ。

 さらに、小売販売には「9%の州消費税/9% state excise tax」と「4%の地方消費税/4% local excise tax(市税)」という2種類の消費税も課せられる。乾燥大麻は多くの場合、3分の1オンス、4分の1オンス、8分の1オンス単位で販売されており、大麻の質にもよるが、1オンスに換算すると300~400ドルが相場というところだ。

 加えて、販売店には“バドテンダー(Budtende)”と呼ばれる「マリファナ調剤師」がいることが一般的で、様々な大麻情報を提供してくれる。“Bud”とは大麻の隠語で、“tender”はbartender(バーテンダー)を意味している。店舗は調剤薬局とお洒落なコスメショップを合わせたような雰囲気で胡散臭さは全く感じない。

次ページ:罰金が科されることも

前へ 1 2 3 4 次へ

[3/4ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。