NY州では“前科”を抹消…「大麻合法化」で社会はどう変わるのか 販売ライセンスに税金、罰則について元マトリ部長が徹底解説

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大麻合法化の目的に「人種差別の解消」

 2023年末に国会で可決・成立した改正大麻取締法が、いよいよ24年12月12日に施行される。大麻を「麻薬」と位置付けて使用罪の適用対象とすると同時に、安全性と有効性が確認されれば大麻から製造した医薬品の利用が可能になる。その一方、わが国では23年の大麻による検挙者が過去最多の6703人を数え、覚醒剤の検挙者数を初めて上回った。“大麻問題”が日本にとって喫緊の課題となっていることはもはや疑いようがない。そうしたなか、避けて通れないのが世界的な広がり見せつつある“大麻合法化”議論だ。【瀬戸晴海/元厚生労働省麻薬取締部部長】

(全2回の第1回)

 日本でもこれまで多くの議論が重ねられてきたわけだが、やはり実態を知ることは重要だと思われる。つまり、“実際に大麻を合法化した国や地域”に学ぶということだ。重視すべき観点は2つ。まず「なぜ合法化に踏み切ったのか」、次に「合法化した後に社会はどう変化したか」である。

 本稿で取り上げるのは21年3月に大麻合法化に踏み切った米・ニューヨーク(以下、NY)州だ。同州は大麻を合法化した目的として、〈新型コロナの影響で赤字に転落した州の景気対策〉と同時に、〈黒人差別の解消〉を挙げている。大麻合法化の目的が人種差別の解消と言われても、多くの日本人は首をかしげるのではないだろうか。だが、アメリカではこの理屈が当然のように語られる。つまり、大麻を合法化して、所持や売買が犯罪でなくなれば、白人と比べて貧困から薬物密売に手を染める可能性が高いマイノリティーの逮捕が減少する、というわけだ。

 先の米大統領選挙に敗れた民主党のカマラ・ハリス氏も、人種差別解消のための大麻合法化を公約として掲げていた。筆者はこの公約について、NY州の大麻合法化事由の“連邦版”という印象を受けた。では、大麻を合法化したNY州はその後、どうなっているのか――。その現状を概観してみたい。

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