「大阪万博」1万円金貨より高価な「10円玉」も…コイン商が明かす「高額で取引される硬貨の条件」とは
12月11日は百円玉記念日。1957年(昭和32年)のこの日、百円玉が初めて発行されたことを記念して制定されたという。いまや完全に日本人の日常生活に溶け込んでいる百円玉だが、実は、発行当初は鋳造に銀が用いられた正真正銘の“銀貨”だった。現在ではなかなかお目にかかれないレアコインである。
【写真】27万円のギザ10、120万円の10円…珠玉のお宝コインたち
とはいえ、コロナ禍で“非接触”が徹底され、また、キャッシュレス決済が急激に普及したこともあり、硬貨を使う機会は以前と比べて明らかに減っている。それでもレアコインや記念硬貨に目がないのは日本人らしさかもしれない。いよいよ開幕が来年に迫った大阪・関西万博でも、振るわない前売りチケットを尻目に、開催を記念して販売される1万円金貨と1000円銀貨が話題を集めている。ちなみに金や銀の価格高騰を受けて、1万円金貨の販売価格は26万8000円、1000円銀貨は1万5200円で、いずれも過去最高額だとか。記念貨幣としての価値だけでなく、素材の価値も重なって人気を集めること請け合いだろう。
一方、お財布の中でたまに見かける“ちょいレアコイン”といえば、縁にギザギザが入った十円玉、通称“ギザ10”だろう。馴染みが深すぎて、見つけてもすぐ使ってしまいそうだが、ちょっと待った。超高額で取引されることもあるそうで――。なんとオークションでは、1枚の“ギザ10”に27万円の値段がついたことも……。つまり、さきほど紹介した関西万博の1万円金貨よりも、高値で取引される10円玉が存在するというわけだ。
硬貨の記念日ということで、知られざるレアコインの世界に触れてもらいたい。もしかすると、今日から小銭入れに入っているコインを見る目が変わるかもしれない。(ライター/山内貴範)
※2023年12月28日に配信された記事【「ギザ10」1枚が27万円に! プロのコイン商が明かす高額落札の理由と、レアコインの価値を半減させる“厳禁行為”】に加筆・再編集しています。表記は配信当時のものです。
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ギザ10はレアコインの象徴?
“ギザ10”といえば、硬貨の縁にギザギザの溝が彫られた10円玉である。子どもの頃、コレクションした思い出がある人も多いかもしれない。ギザ10は昭和26~33年にかけて発行され、最後の発行から実に65年もの歳月が経過している。摩耗したり、汚れたりしたコインは定期的に回収されているので、最近はめっきり見ることが少なくなった。
さて、テレビ番組やネットニュースではしばしば「ギザ10は価値がある」と紹介されるため、保存しておけばプレミアがつくのではないか、と思う人がいるかもしれない。だが残念ながら、財布の中に入っているギザ10は、ほとんどの場合、額面通り10円の価値しかない。ギザ10の中でもっとも発行枚数が少ない昭和33年銘であっても、同じである。
コインカタログに記載されている金額は、コイン商が販売する際の基準となる価格であり、買取価格ではない。ギザ10は発行枚数がそもそも多いため、コイン商に持ち込んでも、買取を断られるケースがほとんどだ。したがって、コンビニやスーパーのお釣りで見つかるギザ10では、まずプレミアは望めないと考えていいだろう。
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