「中山美穂さん」の命を奪った「冬の浴室」はどれだけ危険な場所なのか 専門家は「冬の海より危ない」「死者は年間6000人以上」
若くても危険
「江戸っ子のような熱いお湯好きは、お風呂に入る時、グッと我慢して息を込めて力を入れますよね。その間に腹圧がかかって、血圧がさらに上がります。脳出血や大動脈瘤など血管が破裂するような病気は、こうしたグッと力を入れた時に発症することが多いです」
厚労省が発表した浴槽での死亡数は65歳以上だが、50代でも起こりうるのだろうか。
「頻度は低いです。脳出血や心筋梗塞は高齢者に多く、若い人には少ないですね。ただ、不整脈発作の可能性が考えられます。昔は心臓麻痺と呼びましたが、冷たいプールに入る前に胸に水をかけたりしましたよね。不整脈の一種で心室がブルブルと不規則に震える心室細動と呼ばれる状態になると、脳を含め全身に血液が供給されなくなり、死に至るケースがあります。中高生でも亡くなることがありますから、50代でも十分に考えられます。その引き金が、ストレスであったり急激な熱変動であったりするわけです」
ヒートショックで死亡する場合、どのくらい時間の猶予があるのだろうか。
「ケースバイケースですが、心停止してから5分したら脳は死亡します。もちろん、すぐに心臓マッサージするとか、AEDなどを使用すれば別です。冬の海で溺れた場合などは低体温、つまり脳が冷蔵状態となるので、脳死するまでにもう少し猶予ができます。しかし、お風呂の場合は、あっという間に脳死に至ります」
冬の海より冬の自宅風呂のほうが危険というわけだ。
予防するには
「予防法はあります。居眠りの防止同様、家族がいるならお風呂に入る前に一声かけることが重要です。そして温度差ショックですから、温度差をなくせばリスクは減ります。脱衣場に温風ファンなどを設置することはよく言われていますが、お湯を張る時に浴槽にフタをせず、浴室のドアを開け放って脱衣場と浴室の温度差をなくすのもいいでしょう。また、お風呂から上がる時は、脱衣所ではなく風呂場で体を拭くことで温度差を減らすことができます。湯気で脱衣場が湿気ることもありますけど、死ぬよりはマシです」
入浴前に水を飲むといい、といった話も聞くが、
「脳梗塞や心筋梗塞の原因となる脱水状態にならないよう、水分を摂るのはいいことだと思います。若い子が長時間の半身浴のためにペットボトルを浴室に持ち込むのもいいことだと思います。ただし、ガラスの容器は倒れた時などに危険ですので、プラスチックにしたほうがいいでしょう。逆に、高温のサウナに我慢して入るのは良くありません。ましてやサウナ後の水風呂などは危険が多いし、実際、サウナで倒れたという通報を受け救急車が出動することは少なくありません」
“整う”どころではないのだ。
「若い人はまだしも、文字通り年寄りの冷や水です」