妻の“デート報告”に嫉妬、僕も元カノに連絡したら…「浮気公認」が招いた夫婦の破滅

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言いだしっぺは妻なのに…

 それだけ愛美さんへの思いが強かったのかもしれない。自分の恋を邪魔されるのが嫌だった。だって浮気を認め合おうと言ったのは妻のほうだから。彼の理屈ではそうなる。妻は妻で、あくまでも若くして結婚して馴れあった夫婦の刺激剤として言いだしたこと。デートしたことを報告しあう程度のものと予測していた。だが、目の前の夫の心はここにない。魂を抜かれた肉体だけを目の当たりにして、こんなはずではなかったと思ったのだろう。

「たぶん、梨緒が浮気公認を言い出さなかったとしても、愛美に再会したらこうなっていたとは思うんです。でも梨緒にとっては思惑が外れたということなんでしょう。人の気持ちは想像通りにはならないものですよね。僕だって愛美にこんなに気持ちがいくとは思っていなかった……。オレと一緒にいたくないよねと言ったら、梨緒が頷いたんです」

 その後、彼は家を出て愛美さんのもとへ身を寄せた。これ以上、一緒に住んでいたらかえって梨緒さんを傷つけると思ったからだ。梨緒さんが離婚するというなら彼は応じるつもりだが、彼から離婚を申し出る気はない。

「愛美は最初、『再会できただけでうれしかったから、一緒に住みたいとか結婚したいとか思ってないから』と言っていたんです。じゃあ、僕は家を出てひとりで暮らすよと言ったら、それならうちに来て、と。一緒に暮らして2年近くなりますがうまくいっています。なにもかもがすんなりスムーズなんですよ、愛美とは。それはもう、不思議なくらい。長年一緒に暮らしてきたようなあうんの呼吸ができている」

家庭が崩壊の兆し…

 様子が気になるので、たまに自宅に顔を出すが、梨緒さんは彼と話そうとはしない。子どもたちからは、一時期、毎日のように電話がかかってきた。

「おかあさんが死ぬって言ってる、今すぐ見に行ってと娘から真夜中に電話が来たときは驚きました。すぐ駆けつけましたが、梨緒は眠っていた。薬を飲んだようにも思えなかったし、少しワインが残ったグラスがあっただけ。お酒を飲めない梨緒がワインを飲んでいるうちに娘に愚痴を言ったんでしょう。何かあればすぐ駆けつける、戻ってこいというなら戻る。すべてきみの決断に任せるという内容のメモを置いておきました」

 その後、梨緒さんから「あなたはずるい」とメッセージが来た。確かに僕はずるいと義直さんは言った。だが、自分が離婚すると決めるわけにはいかないと彼は考えている。

「こんなことになって梨緒を傷つけたのはわかっている。でも元はといえば梨緒が言いだしたこと。ある意味では、夫婦で愛美を傷つけているとも言えなくはない。いや、そんなのは全部屁理屈ですね。僕が今、一緒にいたいのは愛美なんです。それだけ」

 義直さんは、やっと心の内が吐き出せたと笑みを浮かべた。妻から妙な申し出があろうがなかろうが、彼が愛美さんと再会したところでこうなることは決まっていたのかもしれない。愛美さんと会えたことで、彼の心の中にあった「若くして結婚したために、若い時代を楽しめなかった」という後悔が洗い流されたのは確かだろう。

「今が青春なのかもしれません。幸せです」

 羨ましくなるくらい、ストレートな言葉が漏れてきた。

 ***

「浮気公認」の定義をめぐって、夫婦にはズレがあったのかもしれない……。一体どちらが悪いのか、そのいきさつは【前編】にて――。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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