妻の“デート報告”に嫉妬、僕も元カノに連絡したら…「浮気公認」が招いた夫婦の破滅
「久しぶりで会わない?」
元カノの愛美さんからは、すぐに返事があった。高校生に戻ったようなメッセージのやりとりをしている中で、「実はつい最近、離婚したの。なんだかさみしくてね……昔の友だちって懐かしいね」と彼女のしんみりした文言があり、義直さんの胸のあたりがぐぐっと締めつけられた。
「久しぶりで会わない? と書いたら、『私はひとりだから、いつでもいいよ』って。そのときは“浮気公認”の件は忘れていました。それを忘れるくらい、愛美に気持ちがもっていかれたのかもしれません」
ただ会いたかった。それは自分の若かりしころへの思い入れに過ぎなかったのかもしれない。人は中年期になると、なぜか昔の友だちを懐かしく思うようになるものだから。それでも再会したところから、またふたりの人生の時計は動き始める。
「30年ぶりに会ってみると、懐かしいというだけではない何かがありました。離れていた時間の長さを感じるとともに、積み重ねてきた彼女の人生の重みというのかなあ。愛美は『年とっちゃった』と笑ったけど、それはこちらも同じこと。思い出話や近況や、とにかくしゃべってもしゃべっても時間が足りなかった」
愛美さんに起きていた悲劇
愛美さんが結婚して遠方へ行ったという話は、20代後半のころに噂で聞いたが、彼は当時、子育て真っ最中で友人たちが開いたパーティにさえ行けなかった。その後も高校時代の友人にはほとんど会っていなかったから、愛美さんがどうしているのかまったく知らなかった。
「結婚して、でも先方の実家と折り合いがよくなくて、5歳のひとり娘を連れて実家に戻ったそうです。ところが娘は交通事故で亡くなった。愛美の父が連れ出していた時に起きた悲劇で、それを機に両親とも疎遠になったって……。悲しい話ですよね。『私は死んだまま生きているようなもの』と自嘲的に言った彼女の顔がつらかった」
悲しみに沈んでいても娘は浮かばれない。そう思って仕事をしながらボランティアを始めるまでに10年かかったと彼女は言った。通信制の大学で学んで資格を取得、今は仕事の中でその資格を生かしているという。
「彼女の重みのある言葉、説得力のある表情、すべてが僕に突き刺さってきました。この人をもっと深く知りたい。そう思っているとき『義直くん、うちに寄って飲み直さない?』と言われ、断る理由などなく、ついていきました」
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