子育て終了で「浮気公認」夫婦になろう… 妻の提案に興奮&恐怖する46歳夫の行く末は

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「夫婦であることに少し飽きたかも」

 息子が大学に入学した3年ほど前から、「これからどうやって、ふたりの老後を迎えるか」と妻と話す機会があった。早い結婚だったため、20代はふたりとも子育てと家庭を維持していくことに必死だったが、40代半ば過ぎにいきなり楽になった。これから人生を再設計することもできそうだとふたりとも思っていた。

「夫婦であることに少し飽きたかもと梨緒が言ったんです。ひどいでしょ。でも感覚的には僕もわかるなと思いました。相手に飽きたというより、夫婦というセットに飽きたというか。これからはもっとひとりで行動したいし、海外ボランティアもまた行きたいと妻は言う。それもいいかもねと話していると、梨緒が『お互いに浮気公認っていうのはどう?』と言いだした。家庭に悪影響がない範囲で、好きな異性とデートしたりしてもいいんじゃないのと妻が言うわけです。浮気というのはどこまでの範囲なのかと聞くと、『それはそれぞれの良識の範囲で』って。たまに報告会するのもいいんじゃないかと、これも妻からの提案でした」

夫婦の刺激剤になれば…

 聞いているうちに義直さんはドキドキしてきた。浮気などする暇もなく、仕事と家庭に忙殺されてきたが、もう大人になった子どもたちに遠慮する必要もない。親も好きなことをすればいいのだ。万が一、浮気が本気になったらどうするのかと梨緒さんに尋ねると、「命がけの恋をしたというなら私は認める。離婚してもいい。あくまであなたがそうしたいならね」と言ってのけた。

「妻は僕がモテるわけないと思っていると感じました。邪推かもしれないけど、そんな感じがした。一方、僕は不安でしたよ。妻は案外モテるんじゃないかと思っていたから。考えたら結婚生活において、僕はいつ『あなたはもういらない』と言われるんじゃないかと思いながら過ごしてきた。妊娠したときの自分の反応、それに対する妻の態度をたびたび思い起こしていた。妻を傷つけたのが、僕のトラウマになっていたんですよね。娘が大学に合格したと聞いたとき、思わず涙ぐんで家族に笑われたんですが、それは僕の贖罪の涙でもあった。あのとき中絶という選択をしなかった妻に心の中で頭を下げました。結局、ずっと頭が上がらないままの生活だったから、浮気公認の話はスリリングで興奮する一方、少し怖かったんです」

 本当に浮気公認をするのか、と妻に何度も聞いた。夫婦の刺激剤になればいいと思うと妻は言った。今、好きな人がいるのと尋ねると「いるわけないでしょ」と一笑に付された。もしかしたら妻にはすでに好きな人がいるから、そんな提案をしているのではないかと疑惑を抱いたのだ。

「じゃあ、お互いにこれからは今までより、もう少し自由にいこうねと妻は言いました。そこから僕らの関係に変化が生じたんです」

 ***

 思わぬ妻の提案に戸惑う義直さん。だが公認の「浮気」にハマっていったのは、実は彼の方だった……。【後編】でそのてん末を紹介している。

亀山早苗(かめやま・さなえ)
フリーライター。男女関係、特に不倫について20年以上取材を続け、『不倫の恋で苦しむ男たち』『夫の不倫で苦しむ妻たち』『人はなぜ不倫をするのか』『復讐手帖─愛が狂気に変わるとき─』など著書多数。

デイリー新潮編集部

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