「テレ朝」が「日テレ」にどうしても“勝てない”ワケ…初の個人視聴率3冠視野も「大差」をつけられる“注目の数字”とは

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テレ朝の3冠王は視野に入ったが

 テレビ朝日が2023年度の個人視聴率争いで、全日帯(午前6~深夜0時)とプライム帯(午後7~同11時)の2冠を獲ることが確実な情勢になっている。ゴールデン帯(午後7~同10時)でリードしているのは日本テレビだが、これもテレ朝が僅差で追っている。テレ朝は初の個人視聴率3冠王が視野に入った。もっとも、CMの売上高は日テレがダントツ。背景にはテレ朝独特の事情がある。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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 日本テレビは2021年度まで9年度連続で個人視聴率3冠王を獲った。圧倒的な強さを誇った。

 風穴を開けたのがテレビ朝日。2022年度のプライム帯で頂点に立つ。一方で日テレもゴールデン帯はトップを守った。全日帯の視聴率は両局がピタリと並び、首位を分け合った。ともに2冠という結果に終わった。

 2023年度もプライム帯はテレ朝、ゴールデン帯は日テレがそれぞれ制した。全日帯はやはり同率タイ。2年連続で両局とも2冠だった。

 今年度はちょっと状況が違う。テレ朝にとって初の個人視聴率3冠王が現実味を帯びている。今年度上期(4月から9月まで)の両局の個人視聴率は以下の通りである。

【日本テレビ】
全日帯3.3%、ゴールデン帯5.1%、プライム帯4.8%

【テレビ朝日】
全日帯3.4%、ゴールデン帯5.0%、プライム帯5.0%

 10月以降もテレ朝の番組は高い個人視聴率をマークしている。ゴールデン帯もあと少しで日テレに追いつく。

 もっとも、CM売上高となると話は別。テレ朝は日テレに歯が立たない。同じ今年度上期のCM売上高は以下の通りである。地上波のみの数字で、TVer分などは含んでいない。

【日本テレビ】
1033億4600万円

【テレビ朝日】
809億1900万円

 かなり大きな差だ。ちなみに今年度上期の個人視聴率争いにおいて、TBSは全日帯、ゴールデン帯、プライム帯の3部門とも3位。CM売上高は778億1600万円だった。3部門で4位のフジテレビは712億100万円だ。

 テレ朝は昨年度のCM売上高でも日テレに水をあけられた。テレ朝が約1668億9300万円だったのに対し、日テレは約2192億7500万円。同じ2冠だったにもかかわらず、なぜ、こんなにも差が付くのか?

テレ朝のCM売上高が伸びない理由

 理由はお気づきの方も多いはず。テレ朝の番組の視聴者は50歳以上が目立ち、いわゆるコア視聴率(13~49歳の個人視聴率)が高くないからである。

 テレ朝のコア視聴率は民放主要4局の中で3部門とも最下位。TBS、フジより下だ。逆に日テレはぶっちぎりのトップ。「世界の果てまでイッテQ!」(日曜午後7時58分)などコア世代を惹き付けるバラエティが揃っていることが大きい。視聴者の世代の違いがCM売上高の格差を生んでいる。

 高齢化が進むばかりであるため、65歳以上が総人口に占める割合は29.1%に達している。コア世代から外れる50歳以上となると、総人口の50%を超えた。

 個人視聴率は全体値だから、人数の多い50代以上が好む番組は個人視聴率が上がりやすい。しかしスポンサーはあまり歓迎しないのである。

「50代以上は40代以下より資産があるのに、どうして?」と、首を捻る方もいるだろう。だが、スポンサーにとって資産は大きな問題ではないのだ。

 それはスポットCM(番組の合間などに流れるCM)を観るとよく分かる。携帯電話会社やゲーム、テーマパーク、化粧品などが目立つ。コア世代と結びつく商品やサービスのCMが多い。高額商品は少ないから、資産はほとんど関係ない。

 コア世代を狙うスポンサーほどスポットCMを多用する。またコア世代狙いのCMほど価格が高くなりやすい。だからコア世代に強い局はCM売上高が伸びる。

 テレ朝の看板情報番組「羽鳥慎一 モーニングショー」(月~金曜午前8時)は連日5%前後の高い個人視聴率をマークする。この時間帯の他番組を寄せつけない。

 ライバル情報番組の日テレ「ZIP 第3部」(月~金曜午前7時55分)とフジ「めざまし8」(月~金曜午前8時)は同2~3%台である。

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