板橋踏切殺人・監禁事件 決め手を欠いた警視庁は「逮捕直前ラスト12時間の任意聴取」に勝負をかけた 起訴時に「罪名が軽くなる可能性がある」

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佐々木容疑者だけ任意同行を拒否

 結局、警視庁は検察と協議した上で方針を転換。最初から殺人と監禁容疑で着手することにした。ただ依然決定打に欠けるため、逮捕状を取って4容疑者を任意同行し、執行前の任意聴取で“落とす”ことにした。いわばギャンブルに打って出たのだ。

 警視庁が任意でギリギリ引っ張れるリミットとして考えたのは、同行を求めてから12時間だった。

「もちろん逮捕後でも聴取はできますが、弁護士がつくなどして喋らなくなる可能性がある。だから任意段階で最後の勝負がしたかったのです。自供が得られようと得られまいとひとまず殺人と監禁で逮捕する方針は決まっていた」(同)

 マスコミ各社にも事前に調整を行った。

「通常、任意同行をかけた時点で報道が始まるものですが、『執行してからにしてほしい』と要請しすべての加盟社が同意した。周辺取材も逮捕まで縛りをかける要望を出してきたことには、テレビ局を中心に反発する声が出ました。確かにそこまで縛る必要があるとは思えないのですが、警視庁としてはそのくらいの意気込みで詰めの捜査に賭けていたわけです」(警視庁クラブ記者)

 かくして、12月8日朝、一斉着手を迎えた。予定通り捜査員を4人の住む自宅に派遣し任意同行を求めたが、ここで一つ計画に狂いが生じた。佐々木容疑者が「行かない」と同行を拒否したのである。

「これも想定の範疇だった。やむなく佐々木容疑者だけはその場で用意していた逮捕令状を執行。残りの3容疑者は任意で引っ張り事情聴取を行った」(前出・警視庁関係者)

「家賃は警察が払うから部屋をそのままにしておいて欲しい」

 そして予定通り事情聴取を行った後の8日午後10時頃までに3人の逮捕状を執行。その後、記者発表したのである。警視庁の狙い通り、他の容疑者たちは“落ちた”かどうかは定かでないが、着手前、こう話す捜査幹部もいたという。

「もしかしたら、起訴時には罪名が自殺教唆や自殺幇助に落ちる可能性がある」

「デイリー新潮」の取材でも警視庁の執念をかけた捜査は伝わってきた。7月、高野さんが住んでいたアパートの大家はこう話していた。

「警察からの要望で高野さんが住んでいた部屋はまだそのままにしています。『7月まで空けておいて欲しい。家賃もこっちで支払うから』と言うのです。これまで2度、警察の人が来て防犯カメラを見せてくださいと言って貸しましたが、何があったかは全く教えてくれません」

 家賃は3〜4万円で佐々木容疑者が代表を務めるエムエー建装が借り上げていた。

「貸したのは高野さんがいなくなる数カ月くらい前のこと。仲介会社を挟んでいるので会社の人にも会ったことはありません。アパートは裏にあるので、高野さんを見かけたこともほとんどない。よくペンキがついた作業服を干していたので、塗装関係の仕事をしていたのかなと思ったくらいです」(大家)

 高野さんがいなくなって半年経つが、親族すら訪ねて来ないと大家は語った。実際、警察関係者によれば、高野さんは一人暮らしで家族も遠方にきょうだいが一人いるくらい、孤独な境遇だったという。

 前編【「お前、とろいんだよ!」57歳従業員を踏切自殺に見せて殺害か 会社社長ら4人を殺人・監禁容疑で逮捕「肛門に棒、熱湯、プロレス技」壮絶いじめの果て】では、高野さんが日常的に受けていたいじめの詳細や事件現場の様子について詳報している。

デイリー新潮編集部

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