過去最高件数を更新した「M&A」の謎 そもそも何する? どう儲ける? 悪徳業者は? 業界団体トップにすべて聞いた
M&A増加の背景にも少子高齢化の問題が
背景には、日本の抱える少子高齢化の問題があるようだ。
「人手不足を原因とする企業の倒産はここ数年、増加の一途を辿っています。会社の業績は悪くなくても、後継者の不在や従業員不足で会社の継続が困難になるケースが増えているのです」
そう解説するのは、帝国データバンク情報統括部の藤本直弘氏である。
「M&Aを巡っては、2024年を“中堅企業元年”と位置付ける政府の方針転換もありました。コロナ禍の頃まで、政府は銀行に対し、経営の行き詰まった企業への積極的な融資を促し、倒産件数を低く抑えてきました。しかし、人口減少が続いていく日本においては、単に企業の数をキープするのではなく、競争力の高い企業を増やしていくことが重要です。そこで政府はDXやM&Aに積極的な中堅企業を税制面で優遇することにしたのです」
以前からあった大企業の“選択と集中”に、中小企業の“後継者不在”が加わり、さらには政府による積極的な後押しもあって、「M&A」を耳にする機会が増えているというわけだ。
「政府がM&Aを推奨する背景には、国民の所得水準を高めようという狙いもあります。事業の効率化や合理化は企業の収益性を向上させますが、それは結果的に従業員の給料アップにも繋がります」(荒井氏)
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