王貞治をしのいだ唯一の本塁打王「田淵幸一」 “ホームランアーチスト”を育てた三人のコーチング(小林信也)
ホームランアーチストと呼ばれた田淵幸一があの美しいアーチに目覚めたのは法政一高3年の春だと言う。
「茨城県の石岡でキャンプをやった。掘っ立て小屋みたいな宿舎で風邪をひいて寝込んだ。3日目くらいに練習に参加した時、病み上がりで力が入らない。それなのに打球がすごく飛んだ。レフトの後ろに林があってね、そこにバンバン入った。あれ? 力を入れなくても飛ぶぞと。それが俺のホームラン感覚、ホームラン人生の始まりでした」
高校時代は無名の存在。長打力が開花し、注目を浴びるのは法政大学に入ってからだ。...