「どうすれば邦子は総理になれますか」と周囲に相談 火災で亡くなった猪口邦子議員の夫・孝さんの“愛妻家”エピソード
「どうすれば総理になれますか」
孝氏が手がけた叢書〈シリーズ国際関係論〉(東京大学出版会)の第1巻を執筆した、東京外国語大学大学院の篠田英朗教授(国際政治学)はこう語る。
「孝先生は戦後の国際政治学の分野において、海外で博士号を取った最初の世代です。海外を熟知した上で日本独自の研究を推し進めた、トップレベルの学者でした。彼にとって邦子さんはお弟子さんのような存在でしたが、学会ではそんな素振りを見せることなく、対等な研究者として接していました」
孝氏は00年、英ケンブリッジ大学出版から学術雑誌「Japanese Journal of Political Science」を創刊した。これに寄稿した米ルイジアナ州立大学名誉教授の賀茂美則氏(家族社会学)によれば、
「孝先生は子どもがそのまま大人になったような天真らんまんさをお持ちでした。研究のアイデアを思いつくたびに、“ねえねえ”と声をかけてくださったあの笑顔が忘れられません」
前出のメディア関係者は夫妻をこうしのぶ。
「社交的な邦子さんは政界の内外に大勢の友だちがいる人気者ですが、いささか浮世離れしており、政治家としてさほど期待されてはいません。以前、総理大臣を目指していると言ってはばかりませんでしたが、正直、なかなか難しいだろうとされていました。ですが、孝さんだけは“どうすれば邦子は総理になれますか”と、真顔で周囲に相談していました。妻を公私にわたって支えた心優しき夫だったと思います」