「村上宗隆」が来季限りで退団へ…ヤクルトは長期低迷に陥りかねない“不安要素”を払拭できるか?

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 12月に入り、プロ野球界では契約更改や来季に向けての話題が主なトピックスとなる時期となった。その中で大きく報じられたのが、ヤクルトの主砲・村上宗隆の契約更改だ。2022年オフに3年契約を結んだこともあって、現状維持の推定年俸6億円でサインとなったが、来季について「日本でやる最後のシーズンになる」と改めて明言したのだ。【西尾典文/野球ライター】

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チーム防御率は2年連続の最下位

 村上は、2022年に当時22歳で史上最年少となる三冠王に輝き、日本人選手では最多となるシーズン56本塁打を達成した。2023年は、開幕前に出場したワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の影響もあって成績を落としたが、今年は33本塁打、86打点で本塁打王、打点王のタイトルを獲得している。これまでの7年間での通算成績は792安打、224本塁打、600打点となっており、“日本球界の4番”と言える存在だ。

 村上が来季限りで退団となると、やはり気になるのが、その後のヤクルトである。2021年に20年ぶりとなる日本一に輝き、2022年にはセ・リーグ連覇も達成。しかし、そこからは一転して2年連続で5位となり、優勝争いに絡むこことさえできていない。

 最大の課題は、長年の弱点である投手陣が一向に整備されていない点だ。チーム防御率は2年連続の最下位に沈んだ。過去10年を振り返っても、規定投球回数をクリアした投手は、小川泰弘(5回)、ブキャナン(2回)、石川雅規(1回)の3人。これは12球団のなかで最も少ない。

 ブキャナンは2019年限りで既に退団しているほか、小川は来年で35歳、石川は45歳となる。彼らの年齢を考えると、ここから大きく成績を上げる可能性は低いと言わざるを得ない。

 もちろん、球団も“苦しい台所事情”は理解している。2014年から10年間のドラフトをみると、2020年の村上を除き、ドラフト1位はすべて投手で固めている。2位は、10人中5人が投手であり、1位と2位で20人中15人を投手が占める「投手偏重」のドラフト戦略をとっている。

即戦力にこだわりすぎている?

 このような戦略を取りながら、今年一軍の戦力として十分な働きをみせたのは、木沢尚文(2020年1位)と吉村貢司郎(2022年1位)しかいない。竹下真吾(2014年1位)をはじめ、風張蓮(2014年2位)や寺島成輝(2016年1位)、大下佑馬(2017年2位)、吉田大喜(2019年2位)は退団もしくは、引退で球団を去っている。この状況について、他球団のスカウトは、以下のように分析している。

「ヤクルトは、投手の視察については熱心な印象が強いですね。特に、即戦力候補といわれる大学生や社会人の投手の視察には、幹部クラスや他のエリアの担当がよく顔を見せています。それだけ、ピッチャーが課題だという認識は強いのではないでしょうか。ただ、上位で指名している選手は、『ある程度、完成されているけど、将来性は疑問』というタイプが多いように見えます。『なるべく早く戦力になる投手を探してほしい』というリクエストを受けてのことだとは思いますが……。そうなると、どうしても、プロでは特長が見えない投手が多くなりますよね。エースとして期待された奥川恭伸が怪我で低迷していることも、もちろん誤算だとは思いますけど」(パ・リーグ球団スカウト)

 名前の挙がった奥川は、2年目に9勝をマークして、日本一に貢献したものの、その後の3年間は、わずか8試合の登板で3勝にとどまっている。くわえて、コメントにもあったように、即戦力候補の投手が多く、過去10年で上位指名した15投手のうち、高卒は寺島と奥川に限られる。

 今年は、吉村やヤフーレ、サイスニード、高橋奎二が100イニング以上を記録しているが、ヤフーレとサイスニードは今年限りで退団する。その分を補うには、若手の底上げが必要だ。しかしながら、二軍の投球回数の上位を見ると、阪口皓亮(元DeNA)や沼田翔平(元巨人)、高梨裕稔(元日本ハム、ヤクルト)といった他球団からの移籍選手が並ぶ一方で、生え抜きの若手投手は戦力になっていない。

 強いて言えば、ドラフト2位ルーキーの松本健吾(トヨタ自動車出身)が、投球回数はチーム6位となる50回2/3を投げて4勝2敗、防御率2.49と結果を残している。ただ、来年で26歳。若手とは言いにくい。

 即戦力の期待を集めた投手がなかなか戦力にならず、チームを押し上げるようなスケールの大きい投手をあまり獲得してこなかった。これが、今のチーム状況に反映されている。

 今年のドラフトでは、中村優斗(愛知工業大、ドラフト1位)、荘司宏太(セガサミー、ドラフト3位)という即戦力が期待される投手を獲得している。育成ドラフトで指名した広沢優(愛媛マンダリンパイレーツ、育成2位)も来年で24歳、下川隼佑(オイシックス、育成3位)が25歳と、こちらも早くから戦力として期待される年齢である。これらの指名を見ても“過去の流れ”を踏襲しているといえるだろう。

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