「ライオンの隠れ家」「宙わたる教室」そして…秋ドラマ【必見の3本】 絶対にラストまで見たくなるヒット作の“共通点”

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ヒットドラマは世相を反映

 プライム帯(午後7~同11時)で放送されている秋ドラマ18作の中で、ファンの熱が特に高いのはTBS「ライオンの隠れ家」(金曜午後10時)、同「海に眠るダイヤモンド」(日曜午後9時)、NHK「宙わたる教室」(火曜午後10時)ではないか。いずれも各種人気投票で上位にランクインしている。3作の共通点は感動作であること。今の視聴者はドラマに感動を求めているようだ。【高堀冬彦/放送コラムニスト、ジャーナリスト】

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 流行歌に世相が表れるのと同じく、ドラマのヒット作にも時代が反映される。

 篠原涼子(51)が主演した日本テレビ「ハケンの品格」(2007年)が大ヒットして以降、女性を主人公とするお仕事ドラマが量産された。だが、このところ影が薄い。秋ドラマには1本もない。

 1986年に男女雇用機会均等法が施行されたあとも女性たちは長く職場で重いハンデを背負わされていた。それがドラマでは溌剌と大活躍するから、観ていて痛快だった。

 しかし、やっと職場での男女同権が当たり前になりつつある。女性管理職や女性役員が続々と誕生している。お仕事ドラマは現実に追い抜かれてしまった。これが、影が薄くなった大きな理由に違いない。

 今は感動作が好評を博している。心寒くなるようなニュースばかりだから、ドラマには胸に染みる作品が求められていると見る。

 前兆はあった。TBSの春ドラマ「不適切にもほどがある」のヒットである。

「このドラマはタイムマシーンが登場し、昭和と令和の価値観を比較したコメディではないか」という声が上がるだろう。1面は確かにそう。しかし、全体のテーマは肉親愛。それによって感動がもたらされた。

 1986年に生きていた体育教師・市郎(阿部サダヲ)は未来を訪れたことにより、溺愛する1人娘・純子(河合優実)が、1995年に阪神・淡路大震災によって他界することを知ってしまう。自分も亡くなるのだが、「俺はいいんだけどなぁ……」とつぶやき、思い悩む。その愛情の深さに観る側は胸を衝かれた。

 この作品は肉親愛をギャグでコーティングしたが、ミステリー仕立てにしたのが「ライオンの隠れ家」である。

 茨城県内の市役所職員・小森洸人(柳楽優弥)は、弟で自閉スペクトラム症の美路人(坂東龍汰)と平穏に暮らしていた。そこへライオンを自称する少年・愁人(佐藤大空)が突然現れ、「ここで暮らす!」と勝手に言い出す。

 小森家は当初、大混乱。洸人は愁人を警察に届けようとしたが、それを思いとどまったのは12歳のときに生き別れた6歳年上の異母姉・愛生(尾野真千子)の子供かも知れないと思ったから。その勘は当たった。

 愛生は18歳のとき、何も言わずに家を出ていった。そのうえ愁人を一言もなく押し付けた。このため、洸人は第8回で再会した愛生によそよそしく、最後まで「あなた」と呼び続けた

 一方、美路人はすぐに「おねえちゃん」と呼んだ。子供のころに愛生が怖いと思っていたことから、最初は少しおびえていたものの、打ち解けた。洸人とは対照的。自閉スペクトラム症で、感情を素直に表せるからである。

 もっとも、洸人も愛生が好きなのは言うまでもない。そうでなかったら、愁人を大切にしない。愛生の異母弟2人への思いも同じ。だからライオンを愁人と名付けた。洸人、美路人の名前から一文字取った。

 愛生は異母弟2人の実母・恵美(坂井真紀)から「困ったことがあったら、洸人、美路人を頼っていい。みんな家族なんだから」と告げられていた。その通りに2人に洸人を託した。

 愛生が小森家を出たのは恵美と血縁のない自分の存在が邪魔だと誤解したからだろう。恵美はそれを察し、のちに一時帰宅した愛生に向かって「みんな家族」と伝えたのである。

 第8回の終盤で愛生と愁人は何者かに拉致された。2人の夫で父親である建設会社幹部・橘祥吾(向井理)の仕業だ。祥吾は家庭内暴力を働く男で、幼い愁人すら痛めつける。橘家は小森家と違い、肉親愛がない。

 全11回で次回は第9回。今後、愛生と愁人を救うのは洸人と美路人に違いない。それが実現したあと、きっと洸人は「おねえちゃん」と呼ぶ。一番の感動シーンになるはずだ。

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