8年かけて定着?「ブラックフライデー」 実はAmazonより早かった意外な先駆者が

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本場のブラックフライデーは世界の経済を占うイベント!?

 ブラックフライデーも、このようにデフレ的な要素は強いものの、今年のように高付加価値な商品の展開が増えていけば、経済への好循環が期待できる。

 なぜなら「ちょっと贅沢」というプラスアルファ消費は、一度経験すると継続的に購買につながる可能性があるからだ。これを繰り返すことで、消費マインドが節約モードから脱却するかもしれない。

 ちなみに、本場アメリカのブラックフライデーは、今年はどうだったのか。アメリカのGDPの約7割を占めるのは個人消費だから、アメリカの経済動向は世界経済に影響する。ブラックフライデーをはじめ年末年始商戦は世界の経済を占うイベントでもある。

 ショッピングモールへの来店が全国調査でマイナス3%減という速報値のとおり、実店舗の売上高は昨年比0.7%増と、昨年を下回る伸び率だった。アメリカの長引くインフレによる節約思考の高まりがうかがえるが、ただし、これは購入形態がネットへ移行している関係もある。ネット販売は14.6%アップで、昨年よりも高いペース。全体では3.4%の売り上げ増と、昨年を上回ったようだ(マスターカード・スペンディングパルス調べ)。

 米小売業界の関係者によると、

「ネットを中心に堅調に推移し、消費意欲は旺盛でした。ただし、トランプ大統領の関税引き上げの警戒心から、“ただ安いから買う”という無計画な購買は少なくなっているようで、それが実店舗の売り上げに現れているのでは」

 さらに米国では、ブラックフライデー後にも商戦がある。ニューヨーク在住の作家・冷泉彰彦さんによると、

「感謝祭の翌週の月曜日にあたる『サイバーマンデー』に、ブラックフライデーでの買物忘れ需要があります。ECサイトを中心としたセールですが、アメリカの職場は、業務裁量権が個人にあり、成果さえ出していれば勤務時間中のネットショッピングお咎めなし。なので『サイバーマンデー』の存在感も近年増しています」

 実際、アドビ・アナリティクスのデータでは、今年は昨年比7.3%増で133億ドルと、過去最高を記録した。いずれはサイバーマンデーも日本に定着するだろうか。できればブラックフライデーのような「ちょっと贅沢」を促すようなイベントとして定着していってほしいと思う。

渡辺広明(わたなべ・ひろあき)
消費経済アナリスト、流通アナリスト、コンビニジャーナリスト。1967年静岡県浜松市生まれ。株式会社ローソンに22年間勤務し、店長、スーパーバイザー、バイヤーなどを経験。現在は商品開発・営業・マーケティング・顧問・コンサル業務などの活動の傍ら、全国で講演活動を行っている(依頼はやらまいかマーケティングまで)。フジテレビ「FNN Live News α」レギュラーコメンテーター、TOKYO FM「馬渕・渡辺の#ビジトピ」パーソナリティ。近著『ニッポン経済の問題を消費者目線で考えてみた』(フォレスト出版)。

デイリー新潮編集部

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