「何でもかんでも捜査してられない」 斎藤知事刑事告発で聞こえてきた捜査当局のホンネは
今後の展開は
今後はどのような展開になりそうなのか。
「斎藤氏とPR社長側とのやり取りがわかるLINEやメール、録音録画などの証拠を押さえて分析し、容疑事実が成立するか否かを丁寧に見極めていくことになります。その中で例えば斎藤氏から“もう全部任しちゃいます。法律に引っかかるので報酬はうまく調整しますが必ずお支払いしますね”などといった提案があれば1発でアウトでしょうが、さすがにそんなことはないでしょう。となるとPR社長が発信した内容が事実か否かが焦点になる。発信が仮に実態を反映したものであっても捜査当局の聴取にそれを認めるかは別の問題。PR社長のメリットにまるでならないので“発信は事実ではなく軽はずみでした”などと証言すればそれ以上は追及できないでしょう」(同)
斎藤氏はPR社長側に対して選挙の準備段階で約71万円の支払いを行っている。各種のデザイン制作の対価との主張だ。公選法は選挙運動においてボランティアであることを関係者に求めるが、この主張の通りなら選挙の事前活動であり問題ない。
報酬の支払いがなければ
捜査当局が実際に動くかどうかはその時の政治状況に左右されるというのはしばしば指摘されることだ。
「例えば2019年の参院選でもちあがった河井克行元法相らによる大規模買収事件については、当時の検事総長と菅義偉官房長官が対立していたという状況があり、総長の早期退任を期待して“メッセージ”を送る菅長官に対してそれを受け入れたくない総長が意趣返しとばかりに河井氏の案件に手をつけたというのがもっぱらの見方です。もちろん法律をつかさどる官庁のトップに君臨していた河井氏のやり方が明らかに法律を逸脱していたことは総長として看過し難かったというのはあるにせよ、官邸との関係が良好なら“スルー”していた可能性もあったでしょう」(同)
「今回の選挙はそもそも地方選挙ですし地元の自民党会派は自主投票を選択しました。捜査当局が積極的に動く動機はさほどないと見られており、現段階では不起訴の可能性が高そうです。双方の説明に矛盾や齟齬(そご)がないかどうかかなり時間をかけて確認したうえで不起訴になるのではないかなと」(同)
現段階では不起訴の可能性が
世間の関心が薄れるのを待ってということも踏まえると来年いっぱいくらいまで不起訴の判断を引っ張る可能性もあるとされる。そもそも与野党問わず多くの政党が電通や博報堂など広告代理店や大手PR会社などに多くを依存しながら選挙を戦ってきたことはよく知られた事実だ。
「選挙運動がボランティアでなければならないというのは公選法が定めるところですが、そのグレーゾーンに手を突っ込むならその他の選挙違反との比較もあって収拾がつかなくなることもありそうです。多かれ少なかれ“ボランティアではあり得ないでしょう”と言われそうなサポート体制などいくらでもありますから。捜査当局は時代の流れを読んで捜査が世の中の支持を受けるかどうかを見極めて動くわけですが、なかなかその判断は難しく大臣経験者など大物の身柄を取ることも無理となると当局も関心を失っていくことでしょう。“何でもかんでも(捜査を)やってられないよ”という言葉も聞こえてきましたね」(同)
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