米国で新興財閥トップが起訴…インド政治と経済を揺るがす「大スキャンダル」発生 西側諸国との対立を深める「上から目線での介入」
贈収賄と不当な手段での資金調達
破竹の勢いだったインド経済の雲行きがあやしくなっている。
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インド政府が11月29日に発表した第3四半期の実質国内総生産(GDP)は前年比5.4%増となり、第2四半期(6.7%増)から伸びが大幅に鈍化した。四半期ベースで3期連続の減速となり、成長率が6%を割り込んだのは2022年第4四半期(4.3%増)以来のことだ。
GDPの6割を占める個人消費が、前期の7.4%増から6.0%増に落ち込んだことが主な要因だ。夏の記録的豪雨が食品価格を高騰させ、消費の重荷となった。食品価格の上昇は鈍化し、第4四半期以降は持ち直すと予想されていたが、ここに来てインドを揺るがすスキャンダルが発生している。
米連邦裁判所ニューヨーク東部地区検察は11月20日、インド政府への贈収賄などに関与したとして、インドの新興財閥アダニ・グループのゴータム・アダニ会長らを起訴した。加えて米証券取引委員会(SEC)も、米国内外の投資家から不当な手段で資金調達した疑いで起訴した。
訴状によれば、アダニ氏らは再生可能エネルギーを手がけるグループ企業のアダニ・グリーンなど2社に利益をもたらすよう、インド政府高官に計2億5000万ドル(約390億円)の賄賂を贈ったという。インド政府とアダニ・グリーンは、市場価値を上回る価格で太陽光エネルギーを購入する契約を締結している。
株価のさらなる下押し圧力になるか
アダニ・グループは11月21日、疑惑にはまったく根拠がないとの声明を出した。だが不正疑惑は昨年もあった。米投資調査会社ヒンデンブルグ・リサーチが粉飾やタックスヘイブン(租税回避地)を利用した脱税などを指摘するリポートを発表したことを受け、インド証券取引委員会は現在も調査を続けている。
1988年創業のアダニ・グループは、空港や運輸、電力などのインフラ分野を柱として急成長を遂げた。中核会社アダニ・エンタープライゼズの今年3月期の売上高は9642億ルピー(約1兆7000億円)に達した。
トップの起訴でアダニ・グループの株価は急落、インドの各銀行は同グループへのエクスポージャー(投融資)を見直し始めた。9月末以降、インド株式市場は企業業績への懸念から調整色を強めているが、この問題が株価のさらなる下押し圧力になることが懸念されている。
アダニ・グループの海外事業にも悪影響が及んでいる。ケニアのルト大統領は11月21日、総額約4000億円相当の契約(空港拡張と電力網整備)の白紙撤回を明らかにした。仏エネルギー大手トタルエナジーズも11月25日、起訴の結果が明らかになるまでアダニ・グループとの事業を停止すると発表した。
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