ついに“復権”に動き出した「岸田前首相」 立て続けに「石破総理」と面会、主要ポストは「旧宏池会」が奪い、党内には“再登板”の声も

国内 政治

  • ブックマーク

 キングメーカーぶりが板についてきた――。最近、永田町で広がる、岸田文雄前首相についての評価だ。石破政権の主流派の基軸をなす一人である岸田前首相が、動きを目立たせている。開会中の臨時国会は、少数与党となった石破内閣が政権維持に向けて直面する最初の関門である。このタイミングとの重なりが、主要プレイヤーとしての「岸田氏再始動」のインパクトを増幅させている。
【市ノ瀬雅人/政策コンサルタント】

 ***

「岸田内閣においては、新しい資本主義という経済モデルを掲げて賃金と投資の好循環を官民の連携のもとに実現して経済を新しいステージに押し上げていこうという取り組みを進め、33年ぶりの高い賃上げの動きなど明るい兆しが見えてきた」

「資産運用立国議員連盟」の設立総会が11月22日に開かれ、会長に就任した岸田氏がマイクを握り、自らの実績を振り返った。ひな壇には自民党の茂木敏充・前幹事長や後藤茂之・元厚生労働相ら、旧派閥の枠組みを超えた実力者が並ぶ。同時に旧岸田派の面々も出席し、実務を回した。

立て続けの面会

 同26日には岸田氏が官邸に石破茂首相を訪ね、同議連の提言を手渡した。その後に記者団を前に、ヨーロッパでは少数与党の国も多いことなどを挙げた上で「少数与党で政権をどのように運営していくのか、知恵を出して国民のために結果を出す政治を実現していかなければならない」と首相にエールを送った。岸田氏が官邸を訪れたのは、首相退任後初めてという。

 この後にも石破首相と岸田氏の面会は続く。同28日には、今度は石破首相が衆院議員会館の事務所に岸田氏を訪問した。臨時国会で激しい攻防となっている政治資金改革などについて意見交換したとされる。29日夜には東京都内のそば料理店で、石破、岸田両氏や鈴木俊一党総務会長らが会食した。これは、日本そばを愛好する自民党議員が「新そば」の季節に行う、定期的な会の一幕であったが、立て続けの面会は否応なく目立っていた。

石破政権の屋台骨

 長期政権を目指したものの、自民党派閥による政治資金収支報告書の不記載問題などが襲い、8月に首相退陣表明に追い込まれた岸田氏。ここにきて動向が注目されるのは、旧岸田派メンバーが石破政権を支える屋台骨となっているためだ。

 例えば、岸田派でナンバー2の座長を務めた林芳正・元外相は、内閣の要である官房長官に就く。9月の党総裁選では石破氏と激しく宰相の座を争ったが、その林氏を石破首相は「誇るべき友人」として、かねて能力を高く買ってきた。第2次安倍政権時には石破幹事長―林農相のラインで環太平洋経済連携協定(TPP)交渉への対応でも連携。先の総裁選の各種討論会の前後では「石破氏から林氏に雑談を持ちかける場面も目立った」(関係者)という。

次ページ:党務でも存在感

前へ 1 2 次へ

[1/2ページ]

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。