民主国家としての未熟さが露わに…「韓国の戒厳令」は5カ月前に予言されていた 朴正煕政権のデジャブ
12月3日午後10時半、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は非常戒厳を宣布、全ての政治活動の禁止とメディアの検閲に動いた。翌4日未明に国会がその解除を決議すると、大統領は受け入れ軍も撤収したが、韓国民主主義の未成熟さが露わになった。韓国観察者の鈴置高史氏は戒厳令を予測していた1本の記事に注目する。
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「畳の上」で死ねない大統領
――民主主義国と思われていた韓国で、戒厳令とは……。
鈴置:韓国人も驚いています。国会はもちろん、与党「国民の力」の代表も批判し、大統領室の側近が一斉に辞意を表明しました。国民のほとんどが今回の戒厳令が異常事態と見たのです。
――なぜ、そんな非常識なことを。
鈴置:尹錫悦大統領が非常識と言うほかありません。ただ、韓国の
民主政治自体が崩れ始めていたのも事実です。1987年に民主化したものの21世紀に入った頃から左右対立が激化し、政権を握った側は相手側の政治家、官僚、はては裁判官までも投獄するようになりました。
現在は保守政権ですが、次は左派政権に交代する可能性が高い。そうなったら尹錫悦大統領はもちろん、その取り巻きも起訴されるのはほぼ確実です。
それを防ぐためには戒厳令を敷いて、次の大統領候補を含む左派の政治家を起訴・収監するしかない、と尹錫悦氏側が判断したと思われます。
左派の野党は今回の戒厳令を理由に尹錫悦大統領の弾劾に動く構えです。与党議員の8人ほどが賛成すれば成立します。今回の戒厳令は藪蛇になる可能性が高い。
図表「韓国歴代大統領の末路」をご覧ください。韓国の大統領は建国以来「畳の上」で死ねません。民主化後も、それは変わりません。
韓国に民主主義は育たない
――韓国の民主主義はそれほどにおかしくなっていたのですか……。
鈴置:今年9月に上梓した『韓国消滅』の第2章「形だけの民主主義を誇る」に詳述してあります。もっともこの本を読んだ人からも「韓国は日本と同じように民主主義を享受しているはずだ」との反論が寄せられました。
思い込みとは恐ろしいものです。韓国が民主化したと聞いて、あるいは韓国人から「我が国は日本以上の民主主義国だ」と聞かされてそう思い込んでしまっている日本人が多い。
『韓国消滅』で豊富な事例を挙げて韓国の危うさを説いたのに、それに気づかない。今回の戒厳令騒ぎを見て「あの本に書いてあることは本当だったのですね」と、ようやく言ってくる人もいて、考え込んでしまいます。
韓国には欧米・日本型の民主主義は根付かないのだと思います。法治の意識に乏しいので、権力を握ると司法を使ってやりたい放題。これでは国内対立がエスカレートするばかりです。
――なぜ、法治意識に乏しいのでしょうか?
鈴置:李氏朝鮮以来、骨の髄まで儒教国家だったから、というのが定説です。「人間の修養によって国を治める」儒教は法による統治と相容れないところがあります。
日本人は平気で国家間の約束を破る韓国人を見て首を傾げます。しかし、韓国の「無法ぶり」は日本に対してだけではなく、国内でも同様なのです。
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