目の前で女性ふたりが殴り合い…修羅場続きモテ男の「苦悩」 始まりは高校時代の略奪事件
マンションに転がり込んだ大学時代
高校時代、「女は嘘をつく」と学んでいたはずなのに、それからも彼は女性を信じ続けていた。相手を喜ばせたくて、いい顔をしてしまう。それが結果、どうなるのかは考えなかった。その場しのぎの優しさであっても、相手によく思われたかった。
「女性には嫌われたくなかった。その思いは強かったと思います」
大学3年生のころからつきあい始めたのは、他大学のマリカさんだった。就職活動をしているときに知り合い、そのまま彼女のマンションに転がり込んでしまったのだ。
「就活をすればするほど、僕には会社勤めは無理だと思うようになっていました。でも彼女は仕事や将来を明るくまじめに語っていた。自分がどうやら通常の人生から外れてしまいそうだと思ったとき、彼女の生きる姿勢に惹かれたんです」
結局、マリカさんは名の知れた企業から内定をもらい、彼は4年生の秋になっても内定ひとつとれなかった。途中から完全に「やる気をなくして」いたという。仕事をする意義がわからなくなっていた。仕事をすることが人生を浪費するようにしか思えなかった。
「じゃあ何がやりたいのかというと、それもわからない。食べていくためには働くしかないんですが、どうせならやりたいことをやりたい。就活の時期になって何を言ってるんだという話ですが、そこで初めて自分の人生と向き合うことになりました」
目の前で女性ふたりが殴り合い
マリカさんが親に買い与えられたマンションでだらだらしていたら、「出て行って」と追い出された。しかたがないなと思いながら、大学をうろうろしていたら、共通の友人である忍さんが「うちに来てもいいけど」と言ってくれた。
「今度は忍のアパートに転がり込んで。部屋が汚かったから掃除をしてピカピカにしたら、すごく喜ばれたんです。料理もよくしましたね。レシピ本を買ってきて、そこに載っている料理をすべて作りました。そんなときマリカがやってきたんです。『帰ってきて』と言われました。忍は『ここにいて』と言い、目の前で女性ふたりが殴り合っているのを見ました。え、僕のことでふたりがケンカしてるのって感じだった。こんなダメ男のために女性ふたりが争っているのは見ていられなかった」
だから忍さんのアパートから脱出し、男友だちの部屋に逃げた。「何をやってるんだ、おまえは」と男友だちに怒られたが、彼は「おまえみたいなのがモテるなんて、世の中間違ってるよ」と最後には笑ったという。
「ふにゃふにゃしているんですよ、僕は。マリカと忍、どちらかを選ぶことなんてできなかった。僕みたいなヤツが人を選ぶなんて傲慢なことはしてはいけないと思ったから」
その優柔不断な態度が女性の気持ちをくすぐるのかもしれない。モテるというよりは「追わせる」のが先天的にうまいのだ。本人にその気はないのだろうが、接している女性にとっては「こちらを振り向かせたい」と思ってしまうに違いない。そんな彼のありようが、さらに人生を混沌とさせていく。
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波乱をよぶ“モテ男”の裕造さん。その後、結婚したものの、当然、普通の家庭生活を送れるはずもなく……。そのてん末は【後編】で紹介している。
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