「小学生ですら“人気者でないと人間の価値がない”という価値観に」 SNSにむしばまれる子供たち オーストラリアでSNS禁止法が成立へ
青少年の犯罪率が過去10年で最高水準に
今回のSNS禁止法案が生まれるきっかけの一つとなったのが、昨年4月の少女自殺事件。
「ビクトリア州に住んでいた15歳のエヴァンスさんは、学校でイジメを受けて拒食症となり、SNSの“1日に200キロカロリーで健康に暮らせる”などといったニセ情報をうのみにして症状が悪化。将来を悲観して自ら命を絶ったのです。彼女の父親は“いくら私が本当のことを助言しても、娘はネットの話しか信じなかった”と嘆き、現在は反SNS運動の中心メンバーとなっています」(外信部記者)
この事件が起きたビクトリア州では、昨年の統計によると青少年の犯罪率が過去10年で最高水準に達している。
そのことを報じたメルボルンの新聞「The Age」の記事では、州警察副本部長が、こう述べている。
「私たちが目にしている児童や若者の犯罪の多くは無分別で、名声やソーシャルメディアの『いいね!』の獲得を狙ったものだ。(中略)盗難車は金銭目的ではなく、単に無謀な運転のために盗まれたものである」
“40代の熟女が狙い目だ”と軽口
ちなみに、オーストラリアにおける10代のSNS利用率は、実に97%にも達しているとされる。
現地には、日本では半ば強制的に所属させられる学校の部活動や、学習塾がほとんどない。放課後の自由度が高いため、子供たちがSNSに夢中になってしまう傾向が強いというのだ。
現地で取材するベテランのジャーナリストいわく、
「iPhoneが発売された2007年、オーストラリアでは10代の女の子がネットを介して知り合った男に殺害される事件が起きて、社会に衝撃が走りました。被害者と同世代の女子に成りすました小児性愛者による犯行でしたが、SNSの進展で同様の犯行は後を絶ちません。男女の出会いをあっせんするマッチングアプリも盛んで、10代の男の子が“40代の熟女が狙い目だ”などと軽口をたたき合う光景さえあるのです」
南半球の大自然に抱かれた先進国という印象が強いオーストラリアでも、SNSは前途洋々のはずの子供たちを確実にむしばんでいた。
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