完全に死語となった「仕事が忙しくて寝てない自慢」…むしろ「よく寝る」ことがビジネスマンの常識に

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3徹だよ〜

 かつて「睡眠不足自慢」が若者を中心に存在した。筆者は広告会社出身で、「広告会社といえば激務」というイメージが世間的には付きまとうが、果たして実際、激務であった。労働時間がとにかく長いのだ。ただ、労働時間が長い理由は、会議に遅れるルーズな人間が多過ぎたことと、サービス業であるため、客からの無茶振りも「はい喜んで!」とやる必要があったから、ということが大きい。

 これは1990年代後半~2000年代前半の光景だが、こうした激務に追われる会社員たちが当たり前のように行っていたのが、他でもない「寝てない自慢」である。私は、「いや~、3徹だよ~」と嬉しそうに語る先輩を何度も目撃している。さすがに人間が72時間寝ないでいられるわけがないので、「3徹」は嘘だろうとは思う。毎日少なくとも3時間は寝ていたと思われる。事実、その「3徹」の期間の間に同氏と一緒に行った飲み会では1時間ほど席で寝ていた。いや、飲み会来るより家に帰った方がいいでしょうよ……。

 このように当時は、意味不明の「睡眠不足が少ない」ことがカッコいい要素の一つになっていたのだ。勤勉さとタフな肉体を自慢するようなものだったのかもしれない。しかし、2015年、電通で過労死自殺があったことも影響し、広告業界も36協定を遵守し、長時間労働は避けるよう指導し、今は各社改善されている。

適正な時間寝た方が…

 その結果、徐々に「長時間労働は悪」という社会的風潮になってきたし、最近では、「睡眠はハイパフォーマンスをするにあたって重要」という論調も定着してきたように思う。有能なビジネスパーソンの一人と捉えられる堀江貴文氏は、2021年5月30日に東洋経済オンラインに掲載された「堀江貴文『睡眠を削って生きる人に伝えたいこと』『リモートワークのエキスパート』が語る」という記事で以下のようにコメントした。

〈どうやら僕は、寝る時聞がもったいないほどに、あくせくと動き回っていると思われているようだ。毎日1~2時間ほどの睡眠で済ませているイメージらしい。自慢することではないが、睡眠時間はしっかり取っている。だいたい1日7時間は確保している。短くても5~6時間は、しっかりと眠る。それだけ寝ても、1日で17時間以上はフル活用できるのだから十分だろう〉

 このように、適正な時間寝た方がパフォーマンスが良くなることはコンセンサスになりつつある。そしてかつては「タナカさん、寝てないんじゃないですか?」「まぁ~、4時間は寝たよ(笑)」と下っ端がエラい人をヨイショする言葉も、もはや通用しない。逆に、長時間睡眠できているうえで、キチンと仕事をすることが羨ましがられる時代になったのだ。

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