国立大に不合格で「18年間の期待を裏切った」と言われ…アダルトチルドレンだった「東ちづる」が母とわかり合うまで

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37歳のとき「これ、私だ」

 広島県尾道市因島の風光明媚な景色のなかで育ち、デビュー前から才色兼備で名を轟かせてきたが、大学受験で第一志望の国立、教育大学が不合格だった際、母・ヒデコさんから「18年間の私の期待を裏切った」と言われ、高校生時代の記憶はほとんどなくしてしまった。

「家庭環境などの影響で子どもらしい幼少期を過ごせなかったことにより、大人になってから生きづらさを感じている人をアダルトチルドレン(AC)と呼ぶことを本で知りました。      まさに『これ、私だ』って気が付いたのが37歳のときでした。ひとりになった途端に涙が出てきたりすることもあって、『私、おかしいのかな』『自分だけなのかな』と思っていたから。原因がわかってホッとする部分もありました」

 このトラウマに向き合おうと、母と共にカウンセリングを受けた。それは8カ月にも及んだが、母も知らぬ間に自分の価値観を押し付けていたことに気づいた。カウンセリングが終了した後、「私があんな育て方をしなかったら、ごめんね」と謝られた。「お母さんも大変だったね。これが最善だったんだよ」という言葉が出た。それは母とともに呪縛から解き放たれ、トラウマが解消された瞬間だった。

 華やかな芸能界で売れっ子となり、「お嫁さんにしたい」と世の男性から憧れの存在となったときも、「私はこれをいつまで死守するんだろう」「このイメージを裏切っちゃいけない」というしんどさを感じていたという。

「本当の自分って、死ぬまでわからないんじゃないかしら。人間って十人十色と言うけれど一人十色だと思っていて、私自身とても生真面目なところもあるし、ふざけたところもあるんですね。きっちりしたところも、だらしないところもある。笑い飛ばせるところも、うじうじいつまでも悩むところもあります。それらをひっくるめて、人生において何を選ぶかは自由だし、自分のやることを母や誰かがどう受け止めるかも気にすることがなくなりました。母に対しては、今はどんな私でも応援してくれるという自信もあります」

 その母・ヒデコさんとの現在の関係を聞くと、「同じジムに通っています」と笑った。「ついさっきまでいて、シニアのクラスで3人でトレーニングを受けていたらしいですよ。新しい友達もできて楽しそうです」と言って、美しく笑った。

 幸せはそんな小さなもので、お金や贅沢ではないようだ。それをかみしめている今、それは永遠には続かないことも知っている。だからこそトレーニングや健康管理に励み、健康な心と身体でいたい。東のトレーニングはそのためのものでもあるらしい。最後に中高年世代にこんなメッセージをもらった。

「70才以上からダンベルでトレーニングしても、筋肉はきちんとつきます。私の祖母は98才で寝たきりになりましたが、そこから毎日1時間半の筋トレを初めて、103才で片足スクワットができたりしたんですよ。何歳になっても筋肉がつく、人間はすごい生きものなんですよ!」

 第3回では、「もう一刻も早く辞めたい」と語る自身の活動について語る。

■東ちづる
広島県尾道市因島出身。俳優、タレントとして幅広く活動。一般社団法人「Get in touch」の代表を務める。自身が企画・プロデュース・出演の映画「まぜこぜ一座殺人事件~まつりのあとのあとのまつり~ 」が全国順次公開中。近著に、自ら描いた妖怪61体を社会風刺豊かに解説した『妖怪魔混(まぜまぜ)大百科』。

デイリー新潮編集部

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