自宅に火炎瓶、メールはすべてハッキング…「民主派45人有罪」香港で“習近平が最も消したい男”が語っていた中国の“恐るべき迫害”

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タダ飯はない

 なぜライ氏は抗議しないのだろうか。

「タダ飯というものはない(There 's no free lunch、何かを得るには何か犠牲が必要)。代償を払わなければいけない。台所の火に近づく時には、それが熱いと分かっている。近づく前から分かっていることだ。だから、驚くことはない。極めて当然のことだと受け止めている。中国政府に異を唱えれば、中国政府から脅威を与えられるのは当たり前でしょう。彼らは私を止めようとする。当たり前のことです」

「日本と香港の若者に何かメッセージがありますか?」との質問には、

「現代では、金を稼ぐことに重点を置きすぎています。ビジネスやキャリアを重視する、それは重要なことだ。ただし、私たちは人間としての尊厳も保たなければならない。自分自身に誇りを持たなければならない。正しいことをする。お金のためだけでなく、社会のために。悪に立ち向かうことが、人間としての使命だ。正しくないことと戦わなくてはいけない。お金のためだけの人生は無意味だ。お金だけで人は幸せにはなれない。よく生きることで、初めて幸せになれる。なぜ中国がこんなに酷い状況に置かれているか。良い人が尊敬されていないからだ。日本や米国では、お金がなくても、正しく生きている人が尊敬されている。中国社会のように、良い人が尊敬されない社会では、良い人は生まれない。良い人がいない国を想像してみてください。なんとひどい社会でしょうか。人々はこのことを真剣に考えなくてはいけない」

 と答えた。

習近平を注視

 当時は、習近平が最高指導者になってまだ3年の時期だった。彼を「どのような人物だと分析しているのか」と問うと、

「習近平は力を持っている。その力をもって、この先正しいことをやるかはわからない。今やっていることが、独裁者として力を持つためにやっていることなのか、中国を自由主義化するためにやっているのか、それはわからない。まだ注視していく必要がある」

 しかし、これまでの習氏の言動を見ていると、「中国を自由化するため」どころか、独裁者として振る舞い、香港の自由に壊滅的な打撃を与えようとしていることは確かだろう。

 ライ氏にはどのような判決が下されることになるのか。その結果いかんによっては、香港の民主化にはさらに暗雲が立ち込めることになる。

相馬勝(そうま・まさる)
1956年生まれ。東京外国語大学中国語科卒。産経新聞社に入社後は主に外信部で中国報道に携わり、香港支局長も務めた。2010年に退社し、フリーのジャーナリストに。著書に『習近平の「反日」作戦』『中国共産党に消された人々』(第8回小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞)など。

デイリー新潮編集部

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