メディアの「偏向報道」はなぜ起きるのか…ネットニュース編集者が明かす「マスコミ」こそが陥る「罠」
大手メディアの敗北
昨今ネットのトレンドに入りがちなワードは「マスゴミ」だが、それと同時に、「偏向報道」というワードも入ってくることがある。米大統領選の期間中、日本では、「マスゴミ」と共にネットに盛んに書かれていた。これは、大手マスコミが、カマラ・ハリス氏を有能な人物として扱い、アメリカや世界を良くする存在だと持ち上げ、一方でドナルド・トランプ氏を差別主義者の極悪人と扱ったことがまず一つ。
【写真】フジテレビの「偏向報道」に対して行われた抗議デモの様子(2011年)
番狂わせが起こった兵庫県知事選でも同様だった。マスコミの多くは、斎藤元彦氏を「パワハラ男」と徹底的に叩きまくった。特に地上波テレビでは、番組が論調を決め、そこに同意するであろう出演者でその場を固め、フリップやパネルもその論調通りにする。
そして、選挙でトランプ氏と斎藤氏が勝利したらスタジオがお通夜状態となり、「一体なぜ……」といった空気感になる所も全く同じだった。そしてその後はお決まりのネット批判が来る。
「我々メディアは多種多様な意見と事実をベースに信頼できる情報を出しているが、嘘だらけのネット情報を信じた愚民の行動により、本来あるべき姿が毀損されてしまった」
こう言いたいわけである。だからこそ、「Mr.サンデー」(フジテレビ系)でキャスターの宮根誠司氏は、斎藤氏勝利の後、「大手メディアの敗北」と述べた。宮根氏はこの前段として平等性を重視し、ファクトチェックや裏取り、プライバシー重視の姿勢をキチンと報道する、と述べた。そのうえで「一方でSNSなんかは、そういうのをポーンと飛び越えちゃう」と発言。
スノッブなメディア
筆者はこの一連の発言については「真実を追求する者がデマ屋に負けた。実に理不尽である」と宮根氏が言いたいのだろうと解釈した。しかし、そうではないのでは。これまで大手メディア、特にテレビはどちらかの陣営や論調に肩入れし、そちらを正義として報道してきて、外しまくってきた歴史があるではないか。ここでその黒歴史を、一度振り返ってみよう。
もっとも分かりやすいのは、2016年の米大統領選。破天荒過ぎるドナルド・トランプ氏は、リベラルで知的で女性のヒラリー・クリントン氏に勝つわけがない、といった論調で報じる大手メディアが多かった。結局トランプ氏が勝利したのだが、メディアは「学歴が低く年収も低い『ラストベルト』に住むバカがポピュリズムに屈してトランプに投票した」と総括した。
基本的に当時のアメリカのリベラルメディアと、そのメディアの論調に従う日本のメディアは、“自分らの分析はバカによる行動を想定したものではない”と述べた。2025年に発足する第二次トランプ政権の副大統領J.D.ヴァンス氏はトランプ氏が2016年の選挙で勝つ前、自身の著書『ヒルビリー・エレジー』で、貧困層が多く、ブルーカラーが中心の「ラストベルト」に住む白人の悲哀を描いたが、この本に登場する彼らこそがトランプ氏を支持したのだ。
ヴァンス氏のこの分析こそがアメリカ全体の民意を表したわけだが、スノッブなメディアはヴァンス氏と同書に登場する一般庶民を見下した。「所詮は人権意識の低い懐古主義の学歴が低くて年収も低い連中の戯言だろう」と。
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