「人を好きになる気持ちがよく分からなかった」33歳が“この人と手をつなぎたい”と思った理由

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 人生いろいろ、家族もいろいろ、幸福の形もいろいろ。近年、「結婚がゴールではない」という声も大きくなりつつあるとはいえ、ゴールインした二人には幸せになってほしいと思うのが人情というものだろう。

 そして、そのゴールに到達するまでには、十人十色のドラマがあるのは言うまでもない。目下、幸せに包まれているカップルにエールを送りつつ、出会いから現在までを根掘り葉掘り聞いてみる「令和の結婚事情レポート」。

 今回登場していただくのは、京都市にある創業99年の豆腐店「並河商店」4代目の並河龍児さん(38)と、居酒屋店員の竹村香星(かほ)さん(33)。

***

 2022年12月、店に立っていた龍児さんの目は、黒の上下に赤い靴を履いた女性に留まった。「もともと黒と赤は大好き」だから気になって仕方ない。それが香星さんだった。

 彼女は京都暮らしを始めたばかり。そこは通勤経路で、黒の上下も働き先である居酒屋の制服に過ぎず、「豆腐屋さんがあることも知らなかった」。龍児さんが店の前で近所の人や子どもと話をする光景はよく目にしており、「地域のおっちゃんが声がけしてはるんやなあ」と思っていた程度。

気付けば午前3時に

 年が明け、龍児さんは近所のバーで仲良くなった男性に気になる女性の話をした。「黒に赤の靴で」と口にした途端、男性は「それって……」。香星さんの居酒屋の同僚だったのだ。

 男性は早速、香星さんに「豆腐屋さん、知ってるやろ? ごはん一緒に行ってあげて」と掛け合った。彼女は「あの豆腐屋さんか」と思ったが、「しらふだと人見知りで恥ずかしいし」とうなずけずにいた。

 この居酒屋が最終営業日を迎えた3月31日の送別会。「今ならお酒入ってるから会えるで」と男性から連絡をもらった龍児さんは夜中にいそいそ出かけた。

 龍児さんの「どうも」で始まり、飲んでいるうちに「家で喋ろっか」と、豆腐店から徒歩3分の香星さん宅へ。気付けば午前3時ごろまでたわいない会話が続いた。

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