「江副浩正」はやはり「起業の天才!」だった…日本メディアが見抜けなかった15兆円企業「リクルート」の“恐るべき”価値

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「もしですね、20年後または50年後も人々が仕事を見つけるのにまだまだ苦労しているという状態になってるんだとしたらですね、これはもう私達の失敗であって、当社の責任だという風に我々は考えています」

 こう豪語するのは、リクルートホールディングスの代表取締役社長兼CEO、出木場久征。2024年5月15日に開かれた同社の通期決算記者会見でのことである。

 ここで出木場が言う「人々」とは日本の人々ではなく、世界の人々だ。出木場はこう続ける。

「現在Indeed(インディード=求人検索エンジンを手掛けるリクルートの米子会社)の月間のユニークビジターは、世界でまだまだたったの3.5億人という状態ですので、今後もまだまだ世界で多くの方々の仕事探しの手伝いができるはずだという風に思っています」
【大西康之/ジャーナリスト】

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売り上げの半分以上は海外から

 モンスター企業、リクルートホールディングスの成長が止まらない。2024年11月に発表した2025年度上期(24年4月~9月)決算は、売上高1兆7987億円、営業損益2697億円の黒字の増収増益だった。

 驚くべきことに、売上高の55%は海外からもたらされる。稼いでいるのは出木場が言及した米国のIndeedだ。株式市場は「まだたったの3.5億人」という出木場の発言を「リクルートのポテンシャル」と受け止め、2024年11月21日時点の同社の株式時価総額は15兆6000億円と評価している。国内6位で、4位日立製作所、5位キーエンスに続く。

求人版のグーグル

 筆者は3年前、リクルートの創業者・江副浩正氏の軌跡を追った『起業の天才!』を上梓した。この11月、同書は新潮社で文庫化された。

起業の天才!』の副題である「江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男」の「8兆円」は、単行本が出た2021年1月のリクルートの時価総額だ。4年足らずで2倍という爆速の成長ぶりには驚くしかない。

 日本で6番目の企業価値がある会社であるにもかかわらず、リクルートやIndeedの何がすごいかは、あまり理解されていないようだ。

 Indeedの競争力の源泉である求人検索エンジンとは、求人サイトや企業のホームページから求人情報を収集し、働く地域、仕事内容、給与水準などをインデックス化して仕事を求める人々に提供するサービスを指す。「NewsPicks」や「グノシー」といったニュースキュレーションサービスの「求人版」と考えれば良い。

 その何がすごいのか。Indeedはこのサービスを日本を含む世界60カ国以上、28言語で提供しており、その求人情報を求めて月間に3億5000万人が訪れる。今や世界で最も利用されている求人検索エンジンであり、求人版のグーグルと言っていい。

 世界の人々は、知りたいことがある時、まずグーグルのサイトを訪れるが、仕事を探すときにはIndeedを訪れる。つまりIndeedは求人情報のグローバル・プラットフォームなのである。

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