「“売国奴”と誹謗中傷」「ウンチでも食ってろ!と写真を添付」 兵庫県知事選で「斎藤支持派」が暴走した理由
“言葉の暴力が拡散して、家族が狂乱状態に”
今回の選挙を支配したのが真偽不明のものも含めたネット上の言説だった点は、NHKの出口調査にも表われている。
投票の参考にしたものとして「SNSや動画サイト」が30%でトップを占め、新聞やテレビの24%を引き離した。そしてSNSや動画サイトを参考にした人の7割以上が、斎藤氏に投票したと回答したのだ。
そんな中、「反斎藤派」とネットで名指しされた竹内英明県議が18日、議会事務局に辞職願を提出する騒動も起きた。
「竹内氏は理由を“言葉の暴力が拡散して、家族が狂乱状態までになった。家族から『政治の道から退いてほしい』と話があった”ためだと説明しています」(民放記者)
実は竹内氏は斎藤氏を支援するために知事選に出馬した「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏からも、SNS上で自宅への突撃予告を受けていたという。
「斎藤は悪玉か、善玉か」という一つの争点に絞られた
そんな異様な選挙戦の投票率は3年前の選挙を15ポイント近くも上回る55.65%に達した。
その背景をITジャーナリストの井上トシユキ氏がこうひもとく。
「自殺した元県幹部の告発文書をきっかけに、県議会が全会一致で斎藤氏の不信任決議案を可決したのが9月。以来、斎藤氏には“パワハラ”や“おねだり”といった負のイメージが定着しましたが、それらは告示日を迎えると急速に払拭されていきました。その理由こそ、SNS上で伝播した“斎藤さんは悪くない”との言説です。これが現実の世論形成にまでつながるうねりを見せました」
今夏の都知事選で、石丸伸二・前広島県安芸高田市長がSNSをフル活用して170万票近くを集めた「石丸現象」を彷彿とさせるものだった。
ただし都知事選と違って、今回の選挙にはある大きな特徴があったという。
それが選挙戦が始まるや、政策論争は脇へと追いやられ、「斎藤は悪玉か、善玉か」の二者択一、という一つの争点に絞られたことだった。
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