親の介護は妻に丸投げ、自分は絶賛不倫中… 「向き合うべきですか?」44歳夫の身勝手さ

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数回食事をして我慢が限界に

 彼女は智恵さんといって、初対面だったが、とても気持ちのいい女性だった。明るくて笑顔がとびきりかわいい。酔っていたこともあり、こんな素敵な笑顔を見たことがないと言ったら、彼女は「顔が丸くて、パーツもみんな丸いんです、私。だから、人に警戒心を与えない顔なんですよ」と笑った。20代後半だという若さがまぶしかった。こういう子と結婚したら、家庭は明るくなるんだろうなと想像し、恭幸さんはその想像を恥じた。

「今度、音楽のことを教えてくださいと彼女が言うんです。うちの会社はエンタメのさまざまなイベントなどを扱っているんですが、彼女の会社は音楽方面に強い。中途入社で、まだいろいろ勉強中だというんです。僕の知っていることなんてたかが知れているけど、よかったらいつでもと言ったら、『連絡しますね』とLINEの交換を迫られた。なんとなく下心がうずきつつ、僕は単なる業界の先輩という立場。それだけだと自分に言い聞かせました」

 相手がするりと飛び込んできたのだ。下心をもってもしかたがない。だが彼は、必要以上に自分を抑制しようとした。その分、かえって下心の強さを自覚するはめになった。

 彼女と数回、食事をしたところで彼の我慢が限界を迎えた。

「僕はきみが好きでたまらない。もちろん結婚しているから、つきあおうなんて言えない。でもこれからもこうやってたまにでいいから会ってくれないかな、友だちとして」

階下のお風呂につかりながら逢瀬を“反芻”

 心の奥からそんな言葉が出てしまうのを止められなかった。智恵さんはじっと彼を見つめ、静かに体を寄せてきた。

「体から始まる恋みたいなことばかりしてきましたから、そんなふうに何度も食事をしてから気持ちを打ち明けてというのが初めてだったんですよ。でも言わずにいられなかった。そうしたらどうやら彼女は受け入れてくれた。驚きましたがうれしかったですね」

 そのままホテルへと行ってしまった。何も考えられないまま、目の前の彼女に埋没していった。そういえば引っ越してから妻とは一度もしてなかったと急に思い出したが、その思いはすぐに消えた。彼女との時間がすばらしかったから。

「何度も求めて、最後は睡魔に引きずられて。目覚めると彼女が僕の腕の中にいた。満たされました。彼女をタクシーで家に送ってから自宅に戻ると、両親も妻子も寝静まっていた。ひとりで階下のお風呂にのんびりつかりながら、彼女とのことを反芻し、明日からの日々に希望を見いだしました」

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